焼肉の解剖学|焼肉の部位を獣医学生が解説

焼肉って部位がたくさんあって自分がいま牛のどこを食べているのか分からないことがよくありますよね。

なので今回は解剖学の教科書を引っ張り出して、焼肉の部位がどの筋肉に相当するか調べてみました!

焼肉を食べる前に…

牛肉を食べることが環境に非常に悪いということをご存知ですか?

もしお時間に余裕があればこちらの記事にも目を通してみてください。

焼肉の部位一覧

焼肉の部位の全てをまとめた図です。
ものすごくマイナーなものを除いたほとんどの部位がのっていると思います。

この記事では焼肉の部位をまず「筋肉」と「内臓」に分けて考えます。

また、筋肉は精肉業界では「まえ」、「ロイン」、「ともバラ」、「もも」の4つに大きく分けられるそうなのでその方式に則ります。

この4つに区分されない筋肉は「その他」にまとめました。

筋肉

まえ

第6~第7肋骨間において切断したくび、肩、胸部を含んだ部位のことです。

大きく「肩ロース」、「かた」、「肩バラ」の3つに分けられます。

ザブトン
肩ロースの一部で肋骨側にある部分。
部位の形状が座布団に似ていることからこの名前が付きました。
筋肉名:僧帽筋

 

 

肩芯(肩ロース芯)
肩ロースの一部で首に近い部分。
筋肉名:菱形筋(頸部と胸部があるがおそらく胸部)、板状筋(?)、半棘筋(?)

 

 

さんかくバラ
肩バラの一部。
バラとは「あばら」のことを指すので、肩バラとは前肢の付け根の辺りにある肋骨周囲の筋肉のことを言います。

第1~6肋骨周囲の筋肉がこの部位に相当します。
切り取った形が三角形をしているためこのように呼ばれています。
筋肉名:外肋間筋、内肋間筋

 

 

ぶりすけ(前バラ、肩バラ)
肩バラの一部。
アメリカでこの部位が”brisket”と呼ばれることからこの名前が付きました。
筋肉名:浅胸筋(?)、深胸筋(?)

 

 

みすじ
かたの一部。
肩甲骨の内側に位置する1頭からわずか1kgしかとれない希少部位だそうです。
上下、真ん中に筋が入っていることからこの名前で呼ばれるようになりました。
筋肉名:大円筋

 

 

肩さんかく
かたの一部。
「クリ」、「クリミ」と呼ばれることもあります。
筋肉名:上腕三頭筋

 

 

うわみすじ
かたの一部。
1頭から600~700gしかとれない希少部位です。
筋肉名:棘下筋

 

 

とうがらし
その名の通り唐辛子に見えることからこのように呼ばれています。
関西では「とんび」と呼ばれることも。
これも希少部位だそうです。
筋肉名:棘上筋

MEMO
肩ロースは「くらした」と呼ばれることもあります。
これは昔、牛に鞍をのせていた場所だからだそうです。

ロイン

牛肉で「ロイン」は、肩から腰に至る背骨に沿って左右に存在する「リブロース」と「サーロイン」に加えて、腰椎から起始し大腿骨に終止する大腰筋や腸骨筋からなる筋肉群の「ヒレ」の3種類の部位からなります。

リブロース芯
リブロースの中心に存在する部分。
美しい霜降りがあり、赤身と脂身のバランスが絶妙な高級部位です。
筋肉名:胸最長筋、腸肋筋など

 

 

リブカブリ(リブキャップ)
肩ロースとサーロインに挟まれた部位。
リブロースの中で背側に位置します。
筋肉名:僧帽筋(胸部)など

 

 

マキ
リブロース芯に巻き付くように位置しているため「マキ」と呼ばれています。
「ふかひれ」という別名を持ちます。
筋肉名:前背鋸筋など(?)

 

 

サーロイン
焼肉の部位の中でも人気が高く、同時に高級な部位でもあります。
背中の辺りの筋肉でリブロースより後方に位置しています。
筋肉名:多裂筋、胸最長筋など

 

 

ヒレ
サーロインより内側にある筋肉。
この肉は柔らかく、ジューシーであるためテンダーロインと呼ばれ、最高級の肉に分類されています。
関東では「フィレ」、関西では「ヘレ」と呼ばれることもあります。
筋肉名:大腰筋など

 

 

シャトーブリアン
ヒレ肉のうち、中央部の最も厚みがあって肉質の良い部分のことです。
希少な部位であることやその高級な味わいから「究極の赤身」、「幻の部位」とも呼ばれています。
筋肉名:小腰筋など

18~19世紀に活躍したフランスの政治家で作家としても知られるフランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンは美食家としても有名でした。

彼はこの部位がとても好きで、ここばかり食べていたことからこの名前が付けられました。

リブロースとサーロインの違い
「食肉用語辞典」によると、第10、11胸椎間で切断した際に頭側をリブロース、尾側をサーロインと呼ぶそうです。

 

また、この2つの部位とすでに上でご紹介した「肩ロース」の3つを合わせてロースと呼びます。

ともバラ

ともバラは腹部の肋骨周囲の筋肉のことです。
腹側に位置するのを「外バラ」、背側に位置するのを「中バラ」と言います。
ともバラの肉はカルビとして提供されることが多いです。

たてばら
外バラに分類される。
腹の下部にある肋骨周囲の肉。
筋肉名:腹直筋、外腹斜筋など

 

 

ササミ(ササニク、フランク)
外バラに分類される。
腹の下部にある肋骨周囲の筋肉のうち後脚寄りに位置する肉です。
見た目が笹の葉に似ていることからこの名前が付けられました。
筋肉名:外腹斜筋、内腹斜筋など

 

 

インサイドスカート
外バラに分類される。
肋骨周囲の筋肉の中でもより内側にあり、横隔膜(ハラミ)に近い部位です。
そのためハラミに近い肉質になっています。
筋肉名:深胸筋など(?)

 

 

カイノミ
中バラに分類される。
中バラの中でも後方に位置し、上で説明したヒレと非常に近いです。
そのためバラ肉ですが、赤身の多い部位になっています。
筋肉名:外腹斜筋、内腹斜筋

 

 

中落ち
中バラに分類される。
肋骨間の筋肉らしいので肋間筋だと思います。
筋肉名:外肋間筋、内肋間筋

カルビはメニュー名であって部位ではない!
上で述べたように「ともバラ」がカルビによく使われています。

しかし、現在はどの部位でも使っていいことになっています。

「カルビ」は韓国語で「肋骨付近」を意味する言葉でした。
そのため当初は肋骨が付いた状態で現在のともバラに分類される肉が売られていました。

しかしその後「カルビ=脂身の多い部分」という認識が定着し、サーロインやリブロースなどの部位も使用されるようになりました。

そして現在カルビは「どこの部位でも構わない」と定義されています。

これは2010年に焼肉店へのクレームを機に消費者庁が焼肉店に焼肉のメニューを細かく定義するように要請した際に決定されました。

もも

ももは「らんいち」、「外もも」、「内もも」、「しんたま」に分けられます。

「らんいち」は「もも」のうちロインに近いお尻に当たる部位です。

「内もも」は「もも」の内側の肉で、「外もも」は「もも」の外側にあって半腱様筋と大腿二頭筋の遠位3分の2で構成されています。

「しんたま」は「もも」から「内もも」を切り離した残りの大腿骨下側にある部位です。

ランプ
らんいちの一部。
サーロインに続く腰のあたりに位置します。
筋肉名:中殿筋、梨状筋

 

 

イチボ
らんいちの一部。
ランプのすぐ隣にある臀部付近の肉です。

らんいちの肉は寛骨に付着しており、この骨は”H型”に見えることから英語で「エイチボーン」と呼ばれています。
それが日本語訛りになって「イチボ」と呼ばれるようになりました。
筋肉名:大腿二頭筋など

 

 

内もも
後脚の付け根の内側にある部分です。
脂肪が少なく、赤身が多く柔らかいお肉です。
筋肉名:薄筋、恥骨筋、内転筋など

 

 

ダルマ
内ももの一部。
内ももで最も柔らかい部位。
筋肉名:薄筋、恥骨筋、内転筋など

 

 

シキンボ
外ももの一部。
この部位は外ももの中でも内側に位置します。
キメが粗く少し硬い肉なので咬むと弾力が感じられます。
関西名では「まくら」です。
筋肉名:半腱様筋など

 

 

ナカニク
外ももの一部。
イチボと連続している場所に位置しています。
他の外モモの部位と同じように少し硬い肉となっています。
筋肉名:大腿二頭筋など

 

 

ハバキ
外ももの一部。
検索すると「お尻に近い部分」と出てきましたが、ハバキは「腓腹筋」と呼ばれる筋肉で、起始は大腿骨で踵骨に終始するため、膝から踵にかけて存在する部位と表現するのが正しいと思います。
筋肉名:腓腹筋など

 

 

センボン
外ももの一部。
ハバキの中心に位置する部位。
肉に筋がたくさん入っていることからこの名前が付けられました。
筋肉名:腓腹筋など

 

 

ともさんかく
しんたまの一部。
断面が三角形なのでこの名前が付けられましたが、形状が火打石に似ていることから「ヒウチ」と呼ばれることもあります。
赤身とサシのバランスがよく人気の部位です。
筋肉名:大腿直筋、外側広筋、大腿筋膜張筋など

 

 

しんしん
しんたまの一部。
関西では「まるしん」とも呼ばれます。
しんたまの中心に位置し、キメが細かくとても柔らかい肉です。
筋肉名:内側広筋など

 

 

かめのこ
しんたまの一部。
断面が亀の甲羅に似ていることからこの名前が付けられました。
筋肉名:中間広筋(?)

その他

タン
知っている方も多いと思いますが、牛の舌のことです。

長さが約50cmもあり場所によって肉質が異なり、先端から「タンさき」、「タンなか」、「タンもと」、「タンカルビ」に分けられます。

1頭の牛から1.5~2.5kgとることができます。

筋肉ですが流通上は内臓扱いです。

 

 

ツラミ
牛のほほ肉です。
良く動かしている部位であるため、歯ごたえがあり、味も濃厚らしいです。

 

 

ネック
その名の通り首のあたりの筋肉です。
筋が多く硬めの肉質ですが、風味や旨味があります。

 

 

スネ
文字通り牛の脛にあたる部分です。
筋が多く非常に硬いですが、煮込みには最適です。

 

 

ハラミ
横隔膜の総称ですが、背側の薄い部分を限局してハラミと呼ぶこともあります。
筋肉ですが流通上は内臓扱いです。

 

 

サガリ
これも横隔膜ですが、腰椎に接する部分限定です。
筋肉ですが流通上は内臓扱いです。

 

 

カッパ
腹部の「皮筋」のことです。
牛がハエなどを払うために皮膚をピクピクさせているのを見たことがあるのではないでしょうか?
あれは皮筋によるものです。

 

 

テール
その名の通り牛の尾です。
コラーゲンが多く含まれているそうです。

内臓

ミノ
第一胃のこと。
牛の4つの胃の中で最も肉厚で歯ごたえがあります。
特に厚い部分を「上ミノ」と呼びます。

 

 

ミノサンド
ミノの中でも間に脂身が挟まっているものを言います。

 

 

ハチノス
第二胃のこと。
胃の内壁が蜂の巣のようにひだ状になっていることからこの名前が付けられました。
焼肉だけでなくスープや煮込み料理にも使われます。

 

 

センマイ
第三胃のこと。
千枚のひだがあるように見えるためこの名前が付けられました。
コリコリとした食感と、ざらざらとした舌触りが特徴的です。

 

 

ギアラ
第四胃のこと。
表面が滑らかで薄く、大きなひだがあります。
赤身があり、4つの胃の中で最も濃厚な味が楽しめます。

コプチャン
小腸のこと。ホルモンの代名詞。
裂いて開いたものを「コプチャン」、裂かずに裏返したものを「マルチョウ」という。

 

 

シマチョウ
大腸のこと。
コプチャンよりも太くて厚く食感も硬めですが、良質な脂がついています。

 

 

テッポウ
直腸のこと。
切り開いてい伸ばした時に鉄砲のように見えることからこの名前が付けられました。
とても弾力があり、噛むのが難しいです。

その他の臓器

ハツ
心臓のこと。
名前は英語の”heart”に由来します。
筋線維が細かいため歯切れがよく、サクッとした食感です。

 

 

レバー
肝臓のこと。
味に癖があるため好き嫌いが分かれますが、ビタミンAや鉄分を多く含む健康にとても良い部位です。

 

 

マメ
腎臓のこと。
牛の腎臓は房状となっておりこれがマメが集まっているように見えるのでこのように呼ばれています。
味はレバーに似ているそうですが、レバーより歯ごたえがあるそうです。

出典:https://www.excelagrovc.com/product/cow-kidney-portion/

焼肉の部位が牛の身体のどこに相当するか何となくでも理解していただけたでしょうか?

もし少しでもお役に立つことができたならば嬉しい限りです。

また、普段は肉はすでに切られた状態で運ばれてくるのでイメージしづらいですが、この記事のイラストなどを見ることで、牛の命を犠牲にすることで私たちは肉を食べることができているということを再確認することもできたのではないでしょうか。

焼肉の部位の名前の由来や、サーロインとリブロースの違い、カルビの定義など話のネタとして面白いと思うので次回焼肉に行く際などに友達や家族の方に是非話してみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

参考
・「食肉用語辞典」 日本食肉研究会 2010年 食肉通信社
・https://yakiniku-motoyama.com/kodawari/untiku.html
・https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1608/pdf/1608_07.pdf
・http://takumi.wishia.jp/menu/part/
・https://gurusuguri.com/cat/02030010000/catcu-article_0013/__ngt__=TT10ff03d4100bac1e4a5a81lxUdVBV64rT9bQqjGMaw2U
・https://www.mannoya.com/about/beef_knowledge/
https://sirabee.com/2020/06/06/20162342673/#:~:text=%E9%9F%93%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E3%81%A7%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%93%E3%81%AF,%E3%81%95%E3%82%8C%E3%80%81%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%93%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82&text=%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%93%E3%81%AF%E8%84%82%E8%BA%AB%E3%81%AE%E5%A4%9A%E3%81%84,%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E5%BD%A2%E3%81%A7%E6%8B%A1%E3%81%8C%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82
・https://niku-miyabi.com/news/sirloin/
・https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0704O_X01C10A0CR8000/


出典
・第一胃画像
https://www.quora.com/How-does-every-stomach-of-a-cow-differ
・第二胃画像
https://www.doctorc.net/Labs/Lab21/Examples/excowrtc.htm
・第三胃画像
http://www.bano-ietc.com/products/cow-omasum
・第四胃画像
https://alchetron.com/Abomasum
・腎臓画像
https://www.excelagrovc.com/product/cow-kidney-portion/