2023 Summer BOOKs

ここ1年ぐらい忙しくて、本を読みっぱなしにしていました、、

読み終わったら、読書のまとめや感想を付けることを習慣にしたい!

とりあえず5冊紹介です。

(本の画像をクリックするとAmazonに飛びます)

 

ガリンペイロ

アマゾンの人里離れた奥地で、ならず者たちが不法に黄金の採掘を行っていることを皆さんはご存知でしょうか。

彼らは「ガリンペイロ」と呼ばれ、来る日も来る日も一攫千金を目指して穴を掘り続けます。

本書はそのような環境に飛び込み、危険と隣り合わせでガリンペイロに密着取材したNHKのディレクターが書いたノンフィクションです。


 

僕がこの本を読もうと思ったきっかけは、金の違法採掘によりアマゾンで環境破壊がめまぐるしい速度で進行していることに以前から関心があったからです。木々が伐採され裸地となり、金の精錬に用いられる水銀が川を汚染し、森に昔から住んでいる先住民族たちが水銀中毒となっています。日本でかつて発生した水俣病と同じ現象が、地球の反対側のアマゾンで起こっているのです。違法採掘業者を取り締まるはずの警察も賄賂をもらって機能せず、そもそも大統領がアマゾンの開発に積極的なのでこれでは破壊に歯止めがかかるわけがありません。

本書を読むことで現場で実際に働いている人が何を考え、どのように生きているかをひしひしと感じることができました。違法とは知りつつも一発当てれば億万長者になれると金に目が眩んだ不届き者もいますが、中には貧困な家庭に生まれ、幼い頃から非行に走って定職につけず仕方なく一発逆転を狙ってガリンペイロになる人もいます。また、登場人物の1人である「マカク」のように、ガリンペイロと娼婦との間に生まれ、ゴミ箱に捨てられたというような不遇な人も大勢います。

このような背景を知ると、彼らにとっては自分の生活が第一で環境問題なんか構っている余裕がないことが容易に想像できます。以前から思っていましたが、環境問題に関心がある人って比較的豊かな生活をしているんですよね。地球上の全ての人が協力して地球温暖化や海洋汚染などに取り組むには、まずは貧困問題や格差を解消する必要があるのではないでしょうか。

この本を読みながらそんなことを考えていました。

ルポ 入管 〜絶望の外国人収容施設〜

在留資格の無い外国人を一時的に収容する施設が「入管」。本書は入管の実情や収容された外国人を独自に取材して執筆されたルポルタージュです。

本の帯に「ここは日本か?!」と書いてあり、興味が湧いたので購入しました。


 

【抜粋】

「日本政府は一九八一年に難民条約に加入したが、近年の難民認定率は一%未満である。」

「羊を連れながら、クルドの土地を一緒に歩いた。周囲に結婚を反対され、駆け落ちもした。ガジアンテブの街中で結婚指輪を二人で探した・・・。ヌリエの脳裏に思い出が蘇る。ジャンダルマに拷問され、精神に変調を来したムスタファ。保護を求めた日本でも難民として認められなかった。入管施設に収容され、精神状態は悪化した。最後は自殺だった。」

「三年、四年と収容されている外国人も多く、中には拘束期間が約八年間に及ぶイラン人もいる。(中略)出口の見えない収容で精神を病む外国人も多く、(中略)自殺、そのほか自傷行為や自殺未遂が相次いぐなど絶望感が広がっている。」

「根本には「移民政策を採らない」「単純労働者を受け入れない」と掲げながら、「技能実習」や「留学」という歪んだ制度で外国人の労働力を確保する政府全体の問題がある。」

「技能実習制度は、中小企業や農家で外国人を受け入れ、習得した技術や知識を母国の発展に活かしてもらうという建前で運営され、事実上、単純労働、あるいは非熟練労働の担い手を確保する制度である。転職の自由が認められていない上、雇用主のパワハラや賃金未払いが横行、現代の「奴隷制度」とも非難されている。」

【本のまとめ】

在留資格の無い外国人を一時的に収容する施設が「入管」。本書は入管の実情や収容された外国人を独自に取材して執筆されたルポルタージュである。

序盤はトルコで迫害を受けていたクルド人の、ムスタファとヌリエ一家の話から始まる。夫ムスタファは父が殺された上に自身も拷問を受けるなどしていた。まず二人の息子が来日し、その数年後に家族全員で日本で暮らすことになった。日本で難民申請をするも認められることはなく、入管へ幾度となく収容された。ムスタファは母国での迫害されていた頃から精神に変調をきたしていたが、入管への収容でさらに悪化してしまった。帰国もできず、日本での生活も許されない、、、。1章はそんなクルド人一家にフォーカスが当てられている。

次は入管施設の内情についてだ。収容者への暴力や、体調不良の者が十分な医療行為を受けられないことが、実際に収容されていた方々への取材で明らかになる。体調だけでなく精神も蝕まれる。世界的に見ても日本の入管は収容期間が長い。これは収容者に自主的に帰国を促すことが目的のようである。しかし、母国の情勢が理由で帰ることのできない場合も多く、そのような人は仮放免と収容を繰り返すことになる。

親子分離も重大な問題だ。90年代までは子供も入管施設に収容していたが、2000年頃から児童相談所に子供の保護を依頼することになっている。日本に入国した途端に親子が強制的に離れ離れにさせられることもあれば、しばらく日本に居住した後に親が入管施設に収容されることで、子供も児相に連れていかれるケースもあるそうだ。いずれにせよ、まだ幼い子供と一緒にいることのできない親の精神的苦痛は想像に余る上に、子供の成長にも悪影響を与える。

日本に来て在留資格を取ることのできなかった外国人は就労することができない。しかし、生きていくためにはお金が必要であるため、不法就労する外国人が後を絶たない。日本に出稼ぎ労働者がたくさん押し寄せるようになったのは1980年代後半。その多くは人手が足りていない劣悪な環境で働いた。彼らは人手不足の時代に日本経済を下支えし、「必要悪」として黙認されていた。その後技能実習制度が創設されると、外国人労働力を確保できる算段がついたためか非正規労働者の摘発に舵を切ることになる。

【感想】

本の帯に「ここは日本か?」と大きく書かれていたのが目に留まり本書を購入しました。私たち日本人が普段何気なく生活している裏で、母国から迫害され日本へ逃げてきた外国人が本書で書かれているような不当な扱いを受けていると知り、とても悲しくなりました。東京などの大きな都市ではコンビニなどで働いている外国人をよく見かけますが、彼らの中にも同じような境遇に置かれている方がいらっしゃると思うと胸が痛みます。

日本政府が外国人をこのように扱っていると知り残念にも思いました。東京オリンピックや2025年に控えている万博などでは外国人を積極的に招致しているとともに、コロナ禍が明けた今、インバウンドも復活していますが、そのような「光」の面がある一方で、日の当たらないところでは当然のように外国人を暴行し、監禁しているという日本政府の裏の顔を見たような気がしてゾッとします。

本書を読み終えたのは2022年の初めでしたが、2023年6月に入管法が改正されました。以前の入管法では難民申請中は強制送還されませんが、改正により3回目以降では強制送還が可能であるとしています。改悪です。本書を読めば分かりますが、不法滞在している人の中には母国に帰りたくても帰れない人が一定数いるのにそのような人たちを無理やり国に返すのは非情です。その一方で技能実習制度において、転職などを認める新制度の作成が現在進んでいます。また、ニュースや新聞などでも実習生の不当な扱いが取り上げれることが増え、認知度も高まっているところです。「外国人のことだから自分には関係ないや」とは考えずに、この外国人をめぐる情勢を知り、問題意識を持つ日本人が増えればいいと思います。

他方で、著者は終始「外国人を厳しく取り締まること=悪」という論調ですが、本当にそうだろうか、とも個人的には思います。考えてみてください。いろんな国の人達が際限なく日本に入ってきて勝手に暮らし始めたらどうなるかということを。僕は他の日本人よりは国内外で外国人と接する機会が多いと思っていますが、世界には多種多様な人がいます。日本の文化に馴染める人もいれば、そうでない人もいます。何が良くて何が悪いかは一概には決められないことが多いですが、日本では非常識とされていることを当たり前のようにする人も大勢います。そんな人々が日本で生活を始めたら、社会が正常に回らないばかりか、犯罪なども増えることになるでしょう。

日本は島国であり、歴史を顧みてもかなり排斥的な国だと思います。他の国との交流が少なくて良い面もあると思いますが、同質な人達が大勢集まることでの弊害も多くあると思い、このように移民に対して個人的にも社会的にも寛容になれないのは間違いなくその一つに数えられると思います。

政治家が、国が、ではなく、日本人が一人一人が今後の外国人や移民との付き合い方を考えなければいけない時代になっていると思いました。

日米<核>同盟

近年は国際情勢が非常に不安定で台湾有事という言葉もよく耳にするようになりました。それでなくても、日本のお隣さんには中国、ロシア、北朝鮮がいて場所的に安全とは言えないんですよね。

しかし日本はアメリカの「核の傘」に入っていることもあって、戦後は平和に過ごすことができています。日米間で核に関してどのような取り決めが、どのような経緯でできたのかについて知りたいと思い本書を読みました。


 

【抜粋】

「核兵器にきわめて敏感な反応を示す日本人にいずれ核配備を受け入れさせるために行ったのが「原子力の平和利用」による「核慣らし」という、日本国内世論のマインドコントロールだった。」

「一九六◯年の安保改定の時点において、日本政府は艦船、航空機上の核兵器を事前協議の対象外とする点に「ひそかに同意」しながら、日本国民に「秘密の取り決め」を告知していなかったことになる。」

「議院内閣制を取る日本の民主主義の本義からして、民意で選ばれた国会に信任された内閣の担当閣僚に、これほどの重要案件を「こいつは信用ならん」との高級官僚の”皮膚感覚”だけで伝達しなかったというのは、驚愕すべき事実だ。」

「公共政策とは生来”生き物”であり、「立案→決定→執行→評価→再立案→決定→執行・・・」という循環を繰り返しながら、公共の福祉を最大化するための「より良き政策」が実現されなければならない。」

【本のまとめ】

序盤では、終戦後にアメリカが日本でどのように核の平和利用を推し進めてきたか、また、福島での原発事故の際のアメリカ政府の対応の舞台裏について詳述されている。

日米の政府間で交わされた核密約は、アメリカが日本の同意なしに日本の港へ核弾頭を搭載した艦隊を入港できるというもので、国民はもちろん、外務省の官僚の判断によっては外務大臣にもこの取り決めの内容を伝えることはなかった。二度の原爆投下と第五福竜丸の被曝を受けて国民の反核の気持ちは大きかったが、中国、ロシア、北朝鮮の台頭によって、それらの国々を抑止する力も必要で、その妥協点として核密約が完成することになる。また、アメリカが日本に核兵器を持ち込むときは「NCND政策」、つまり核兵器の存在を”Neither confirm nor deny(否定も肯定もしない)”とすることで、日米両政府が核兵器の持ち込みに関する議論をしなくて済むようにしていた

本書の後半では核燃料サイクル政策について多くのページが割かれている。これは使用済み核燃料を再処理して原発で使うというものだ。高速増殖炉を開発して燃やした以上のプルトニウムを得るという計画も進んでおり、最終的には電力会社がこの事業を完全に請け負う目論みであった。この再処理計画はアメリカからのお墨付きをもらうことができたが、その後技術的な問題で頓挫することになり、政府と電力会社で責任の擦り付けが行われることになる。

【感想】

「核を持たず、作らず、持ち込ませず」で有名な非核三原則は沖縄返還に際して、佐藤栄作が唱えたものです。佐藤首相はその後、ノーベル平和賞を受賞しています。それを外務省の事務次官が「バカな話」と一蹴し、佐藤首相本人も「非核三原則の『持ち込ませず』は、誤りであったと反省している」と言っているのには拍子抜けしました

NCND政策も両政府が核持込みの議論から目を背けることができる都合の良いもので、こんな裏技みたいなことが実際の世界で起きているということに驚きを禁じ得ません。

ですが、核反対の日本人が多くいる中で安全保障をどうするか、そしてアメリカの核の傘に入っている日本としてアメリカの機嫌も取らないといけない、ということを考えるとこれが妥協点だったとも考えられます。

ロシアのウクライナ侵攻で日本だけでなく世界がエネルギー安全保障を大きく見直すことになりました。日本はエネルギー資源が少ないので核を安全利用することには大きな意味があると思います。核燃料の再処理は夢のような話ですが、未だに実用化されていないのは残念です。安全性を担保することを大前提に着実にプロジェクトが進めばいいと考えます。

言語の本質

言われてみれば確かに不思議です。なぜ人間だけが言葉を持つのか。

他の動物でも音を介したコミュニケーションはありますが、これほど多岐にわたる事柄を伝えることはできません。

それに人間の言語も一つではありません。地域ごとに数多の言語があります。なぜ人間だけが言語を習得できたのか、そしてどのようにして言語は生まれたのか。

普段当たり前のように使っている言葉の裏側を知ってみたいと思いました。

 
 

 

「言語とは何か?」そんな素朴な疑問の答えが欲しいと思ってこの本を手に取りました。読み進めていくうちに、当たり前で普段気にも留めない「言語」が次第に不思議なもの、実体のない生き物のように、思えてきました。

本の前半はオノマトペについて詳しく説明するのにページが割かれています。オノマトペって日本語にしかないと思っていたら、色んな言語にあると知り改めて自分の無学を痛感しました。そのオノマトペですが、もちろん言語によって全く異なります。しかし、単語を発する時の口の大きさや、音の高低、口の中の空気の流れと意味に共通点があるというのです。例えば、発音するときの口が大きくて音が低ければ、「大きい、重い」などの意味になりやすいというのです。このようにオノマトペは対象を音で写しとっている点から、音と意味に関連があると言えます。しかし、オノマトペだけでは十分なコミュニケーションはできません。その後、様々な事柄を相手に伝えるために、どのように言語が進化したのかが説明されています。

英語にオノマトペが少ない理由についても触れられていました。日本語では「話す」や「歩く」などの動詞の前にオノマトペを付けることでより詳しく状況を述べることができます。一方で英語では「話す」や「歩く」という意味を表す言葉には多くの種類があります。これは日本語であればオノマトペで表現される様態がそれぞれの単語に取り込まれてしまっているからだというのです。「英語にオノマトペが少ない」と「英語には動詞に多くの類義語がある」という2つの知識は以前からあったのですが、これらがリンクしてハッとしました

最終章ではなぜ人間だけが言語を持つのかという大きな問題について筆者たちの考えが書かれていました。それによると、ちょっとした人間の考え方の”癖”が人とその他の動物を大きく分けているらしいのです。その”癖”はアブダクション推論と呼ばれています。例えば美味しいラーメン店にはいつも行列ができていることから「美味しいラーメン店→長い列」とすることができます。しかし逆に長蛇の列ができていてもそのラーメン屋が美味しいとは限りません。店の従業員が急遽休んでしまい店の回転が悪くなっていたり、近くで大きなイベント終わり、その帰りに多くの人がそのラーメン店に行っているだけなのかも知れないからです。ですが多くの人は「長い列→美味しいラーメン店」という誤った想像をしてしまいます。観察した事例から新たな仮説を作って推論することを「アブダクション推論」と呼ぶらしいです。このように学習したことや結果から、原因などを(多少誤りがあっても)一般化するという行為を人間が主に行い、チンパンジーなどの他の動物は行わないというのが筆者の実験で明らかになっているようです。そしてこの推論が言語を学ぶ上で不可欠であり、人間のみが言語を持つ理由になっているとのことでした。

僕は人間の進化は二足歩行や脳の容量が大きいからであるとか、火が使えて栄養を多く摂れるようになったことが理由であると考えていましたが、”思考の癖”という目に見えない抽象的なものが人間と動物をここまで大きく分けているかも知れないと知り、狐に包まれたような感覚になりました。

こんなに目から鱗が落ちる本は久々でした。普段何気無く使っている言語を新たな視点から捉え直すいい機会となりました。時間を空けて読み直したいです。

エネルギー 上・下

最後は小説です。

ロシアのウクライナ侵攻が始まってから、天然ガスや石油の高騰が生じ、様々な国でエネルギーの調達が問題となりました。

何となく「日本はどうやって海外からエネルギーを買い付けてきているのだろう」と不思議に思い、この小説を読むことに。小説ですが、知識が盛りだくさんで勉強になりました。

 

原油の取引やサハリンプロジェクトなど小説のタイトルにもなっているように「エネルギー」をテーマとした小説でした。

この小説は何と言ってもそのスケールが大きく、読んでいて全く飽きがきませんでした。ストーリーは日本、イラク、ロシア(サハリン)、中国、アメリカなどで同時進行しており、登場人物たちも世界のいろいろなところに移動します。世界を飛び回り、外国人と折衝して石油を買い付けて、日本の電気会社に売る、、かっこよすぎます笑

登場人物は、日本人では総合総社の社員、経産省官僚、海外投資銀行のエネルギー部門の社員、環境系NPO法人のスタッフなどで、外国人ではイラクやロシアなどの政治家や政府機関の職員、あとは欧米の石油会社の社員や、国際協力銀行などの金融機関の職員などでした。出てくる人が結構多いため読み始めは覚えるのに少し苦労しましたが、その分ストーリーに厚みが出ていたと思います。

フィクションではあるものの、専門的な話が盛りだくさんであり、結構勉強にもなります。ロシアのウクライナ進行から世界中でエネルギー安保への関心が高まりましたが、この小説を読むことにより日本が海外からどのようにエネルギーを調達しているかの裏側を垣間見れた気がしました。特にサハリンプロジェクトは最近でもニュースなどで取り上げられていますが、このような大きな事業を進めるにあたってどのような取引や交渉があるのかを少しだけでも知ることができました。


どれも面白いので是非読んでみてください!

ちなみに本は以下の記事でも紹介しています。

獣医学生の本棚