70秒に1人が死ぬ。マラリアについて獣医学生が解説

ケニアの2か月半の滞在を終え、現在は中南米のベリーズにいます。

ケニアで最も恐れていた病気がマラリアでしたが、幸いにもこの病気にかからずに無事にケニアを後にしました。

日本では身近な病気ではないですが、世界では以前として多くの人が亡くなっている深刻な病気なので今回はマラリアについて色んな側面から説明していきたいと思います。

マラリアとは?

マラリアは蚊によって媒介される原虫により引き起こされる病気です。

2017年では87か国で2億2千万人もの人がかかり、推計で43万人程度の人が亡くなりました。計算すると70秒に1人の割合で人が死んでいます。
WHOによると2000年から15年にかけてマラリアによる死者は62%減少したのですが、感染者数は増加しているそうです。

2017年にはマラリアの対策に31億円が使われ、そのうちの28%にあたる9億円を実際にマラリアが発生しているアフリカから捻出されています。

マラリアによるアフリカの経済損失は年間約1.2兆円とされています。

マラリアにかかることで仕事につけなかったり教育を受けれなくなったりし、それが貧困につながり、貧困になるとマラリアを治療するお金を払えなくなるという悪循環に陥っています。アフリカの経済発展にはマラリアの撲滅が必要不可欠であると考えられています。

マラリア原虫とその種類

出典:http://aiscope.net/what-is-malaria/

マラリアはプラスモジウム(Plasmodium)属の原虫により引き起こされます。

プラスモジウム属には200種ほど知られているがそのうちの5種類がマラリアを引き起こします。

特に、P.falciparumP.vivaxは重度の症状を引き起こします。

マラリアは大きく4種類に分けられます。

・熱帯熱マラリア
P. falciparumが原因。
毎日発熱し早期に治療を行わないと死に至る最も危険な種類です。

・三日熱マラリア
P. vivaxが原因。
48時間ごとに発熱を繰り返します。

・四日熱マラリア
P. malariaeが原因。
72時間ごとに発熱を繰り返します。

・卵型マラリア
P. ovaleが原因。
48~50時間ごとに発熱を繰り返します。

5種類目はP. knowles。近年マレーシア、ボルネオ島での集団感染が明らかになりました。

症状

マラリアは簡単に言うと、急性の発熱を引き起こす病気です。

蚊に刺されてからおよそ10~15日後に発症し、初期症状は発熱頭痛寒気であり、この段階ではマラリアと判断するのが難しいです。この他にも吐き気、嘔吐、筋肉の痛みなどが症状としてあげられます。子供の場合、貧血や代謝性アシドーシスによる呼吸器障害が伴うことがあります。大人の場合は多臓器不全を伴うことがありますが、多くの流行地では大人になるころには免疫を持っており、マラリアにかかっても無症状であることが多いです。

24時間以内に治療しなかった場合、P.falciparumに感染していた場合は重症となり、しばしば命を落とすこともあります

マラリアによる死は大きく以下の5通りに分けられます。
1、脳へのダメージ
マラリアに感染した赤血球が細い血管につまることで、脳にダメージを与えます。この場合けいれんや昏睡を伴います。

2、肺水腫による呼吸困難

3、臓器不全
腎臓や肝臓の機能を低下させたり、脾臓を破壊する。これらは生命を危険にさらす。

4、貧血

5、低血糖
これはマラリアによっても引き起こされますが、マラリアの予防薬である「キニーネ」によっても引き起こされます。
低血糖は昏睡や場合によっては死にもつながります。

かかる危険のある人

世界中の人の約半数がマラリアに感染する危険にさらされており、推計によるとおよそ43万人もの人がマラリアで1年間に亡くなっています。

乳児や5歳以下の子供、妊娠している女性や、HIVにかかっている人はマラリアにかかったあとに重症化しやすく、5歳以下の子供は死亡者数のおよそ60%を占め、ほとんどのマラリアはサハラ砂漠以南のアフリカで発生しています。

全マラリアの症例の半数をナイジェリア(25%)、コンゴ共和国(11%)、モザンビーク(5%)、インド(4%)、ウガンダ(4%)の5か国が占めます

感染

ほとんどの場合マラリアはハマダラカのメスの吸血によって引き起こされ、これらの蚊は夕暮れから日没にかけて吸血をします(メスが吸血するのは卵に栄養を与えるためです)。

感染は寿命が長い蚊の種類の方が感染が起こりやすいと言われています。なぜならマラリア原虫が成熟するまでの十分な時間が取れるためだからです。また周りに動物がおらず人しか吸血できる動物がいない環境でも感染しやすいです。

アフリカの蚊が長い寿命を持ち、人を吸血しやすいという特徴を持っていることが、マラリアがアフリカで最も猛威を振るっている理由です。

 

感染のしやすさは降水パターン温度湿度によって左右されます。なぜらなこれらのファクターは蚊の発生に大きく関わっているからです。

多くの地域では感染には季節性があり、感染のピークは雨期の最中または雨期の直後に来ます。

マラリアの大流行は、多くの人々がマラリアの免疫を保持していない地域で突然天候などの条件が蚊にとって好都合となった際に発生しやすいです。

 

人間の免疫も重要なファクターです。

マラリアの流行地域で生活していると大人になるころには免疫を獲得している場合が多いが、それは完全にマラリアの発症を防ぐものではなく、マラリアが重症化するのを防ぐ程度のものだそうです。子供の頃には免疫を獲得していないために子供の死亡率が高くなっています。

 

蚊による感染以外にも、母から子へ、輸血によって、そして注射針の使いまわしによっても起こります。

マラリア原虫の生活環

マラリアは蚊の吸血時に人間の体内に侵入し、まず初めに肝臓に移動し、肝細胞内で成長します。

その後、血液中に移動し赤血球内で増殖サイクルを繰り返します。

一部が生殖母体に成長し、この段階で蚊の体内に入ると腸内で生殖が行われます。
人の体内で生殖は行われません。

生殖が終わると腸外に移動し最終的に蚊の唾液腺に移動します。
次に蚊が吸血する際に唾液と一緒に人間の体内に侵入します。

詳しくはイラストをご覧ください!

予防

出典: https://www.sumitomo-chem.co.jp/sustainability/society/region/olysetnet/

蚊に咬まれることを予防することが一番の予防です。
それには蚊帳の使用と室内での殺虫スプレーの使用が効果的だと考えられています。

みなさんは日本企業によって作られた蚊帳がアフリカで大変人気だということをご存知でしょうか?
住友化学の防虫剤が織り込まれたポリエチレンの蚊帳「オリセットネット」がケニアでのトップシェアをほこります。
2001年にはWHOから世界初長期残効型蚊帳としての効果が認められ、現在はUNICEFなどの国際機関を通じて80以上の国に供給されています。

また、住友化学はオリセットネットの製造技術を現地企業に無償提供し、現地生産を行っています。
タンザニアでは7000人もの人がオリセットネット関連で働いており、雇用機会を作るという点でも現地に貢献しています。

日本人としてとても嬉しいですね!
詳しくは以下のリンクからご覧ください。

「オリセット®ネット」を通じた支援 住友化学
https://www.sumitomo-chem.co.jp/sustainability/society/region/olysetnet/

マラリア予防薬も有効です。
僕がケニアに滞在していた際は「マラロン」というものを服用していました。
この薬は毎日飲まないといけないうえに、1錠600円と高額でしたが副作用もほとんど感じることなく飲み続けることができました。

他の薬では1週間に1錠というものもあるのですが、そのようなものだと副作用が強いです。
お財布には優しくないですが、マラリア予防薬を買う方がいたら僕はマラロンをおすすめします。

妊娠中の女性と乳児対しては、WHOはスルファドキシン/ピリメタミン合剤の断続的な使用を推奨しています。2012年からWHOはサハラ砂漠以南での季節性のマラリアに対しての化学的予防を提案しており、スルファドキシン/ピリメタミン合剤とアモジアキンを感染率の高い季節では毎月5歳以下の子供に投与しています。

殺虫剤耐性の蚊の出現

蚊の数のコントロールによりマラリアの予防は成果を上げていたが最近では薬剤耐性のハマダラカの出現が問題となっています。

調査によると、68か国で日常的に使われている殺虫スプレーの5種に1種の割合で耐性が生じている。

蚊帳にも使用されている防虫剤であるピレスロイドにも耐性をもつ蚊が多く出現しているが、それでも蚊帳は依然としてマラリアの予防に絶大な効果をあげています。

抗マラリア剤への耐性

1950,1960年代に以前使用されていたクロロキンやスルファドキシン-ピリメサミンに対する薬剤耐性マラリアが広がり、一度下火になった子供の死亡数が再度増加しました。

WHOは2001年からアルテミニシニン誘導体と他の抗マラリア剤を併用するACTという療法を推奨していましたが、近年ではメコン川流域でACTに耐性のあるマラリアが出現し問題となっています。

ワクチンについて

RTS,S/AS01 (RTS,S)またはモスキリックスと呼ばれるこの薬は一番最初のそして現在も使用されている唯一のワクチンです。マラウイではすでに2歳未満の乳幼児への接種が始まっており、ケニアとガーナでも行われる予定です。

WHOはサハラ砂漠以南でのワクチンの段階的な導入を検討しています。

臨床試験の結果によるとマラリアの感染を4割近く減少させるようです。

現地の人と話して

滞在中にケニアの方とマラリアについてたくさん話しました。
本やネットでは見つけることのできない生の情報をたくさん聞くことができたのでQ&A形式で書いていきます!

Q マラリアにかかったことある?

子供の時には数回かかったそうですが最近は滅多にかからないそうです。

住んでいる場所もそうですが大人になるにつれて免疫が強くなっていったのだろうと思います。

Q マラリアにかかったらどうする?

すぐに病院に行きます。病院にはマラリアに対する薬があるので早めに診断すれば大事に至らないとのことです。

また、民間療法で”ニームの木”の葉を煎じて飲むというものがありました。

最近は病院に行くのでこれを実践している人はいないらしいですが知人が子供の時にはこのようにして治療したこともあったとのことです。

ネットで調べてみたら確かに効果があるみたいでした!

Q 周りでマラリアで亡くなった人いる?

少し不謹慎ですが聞いてみました。

ほとんどの人が知り合いや親戚でマラリアで亡くなった人がいると答えました。

それだけ流行している病気ということですね。

ある人の親戚は高熱で正気を失い、錯乱して7階から飛び降りて死んでしまったという話を聞きました。

本当に恐ろしい病気です…

日本では馴染みがないですがアフリカでは以前として猛威をふるっている病気だということが分かりました。

亡くなっている人のほとんどが5歳以下であることや、この病気が経済発展の足を引っ張ているなどの悲しい事実を知りました。

僕自身がこれに対してできることは限られていますが、このようなことを知り普段健康に生活できることのありがたさを知ることができました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/malaria
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/malaria/symptoms-causes/syc-20351184
https://www.niid.go.jp/niid/ja/encycropedia/392-encyclopedia/519-malaria.html
https://atm.eisai.co.jp/ntd/malaria.html

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