2021 Summer Books

北海道もこの頃は気温が高く、いい天気の日がたくさんありましたが、コロナのせいで外出できない日も多くありました。

まとまった時間が多く取れたので、溜まっていた本をたくさん読みました。

最近読んだ本の中からおすすめのものを紹介します。

(本の画像をクリックするとAmazonに飛びます)

 

トリノトリビア

さまざまな野鳥の面白い生態をマンガと共に解説してある本です。

文章も堅苦しくなく、ユーモアに溢れるマンガがあるため鳥に興味のない人でも楽しみながら読むことができると思います。

これを読んだら、街中で鳥を見た時に足を止めて観察したくなるでしょう。


著者は鳥類学者の川上和人さん。本を多数執筆されており、「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」などが有名です。

この方の文章は読んでいる人を飽きさせません。

本で紹介している鳥も「そんな鳥どこで見られるの?」といったものはなく、スズメ、カラス、ムクドリ、ヒヨドリなど近所で見かけるものばかりで、鳥に詳しくない人でもとっつきやすいと思います。

見開きで1エピソード紹介しており、1つ1つにマンガがついています。

本を読むのが苦手な方はマンガを見るだけでも十分に楽しめると思います。

色々な人にオススメしたい本です!

モンゴル帝国の興亡 上下

「チンギス・カン」や「クビライ・カン」という名前や、モンゴル帝国が二度に渡って日本を侵略しにきた「元寇」は歴史を忘れてしまった人でも覚えているのではないでしょうか。

モンゴル帝国は東は中国北部から、西は現在のポーランドのあたりまで、そして中東地域も支配下に置いたユーラシア大陸における史上最大の国でした。

このような巨大な国がどのようにしてできて、どのように滅んで行ったのか興味があったので上下巻にわたるこの本を読んでみようと思いました。


モンゴル高原には多くの部族がいましたが、統一されていたわけではなく別々に行動していました。

そこに突如チンギス・カンが現れ、「千戸制」によって彼らを一つにまとめあげます。

これがモンゴル帝国のはじまりです。

銃や自動車などの機械がなかった時代、馬に乗って戦う遊牧民の戦闘力は非常に高く、金を倒し西方に侵略をすすめます。

教科書ではスペースが限られているため、最低限のことしか書かれていませんが、この本を読むことでどのように侵略を進めたのかということや、帝国内部での相続争いなどを事細かく知ることができます。

また、モンゴルが現在のヨーロッパまで進軍していたとは知らなかったので大変驚きましたし、教皇やフランス王とモンゴルの間で使節とともに書簡が送られていたことも初耳でした。

学校で学んだ時は、日本やアジアの視点からでしかモンゴル帝国を見た時がなかったので、ヨーロッパの国々からこの帝国を見ることはとても新鮮でした。

モンゴルは内陸をある程度侵略すると海にでました。

遊牧民出身の国家が海上帝国も持つということは史上初めてのことであったそうです。

そして、彼らは日本にも攻めてきました。本書では元寇についても詳しく書かれています。

筆者はこの蒙古襲来が日本に国家としての自覚を持たせたと主張しており、「なるほどな〜」と思いました。

日本は、モンゴルという他者の攻撃を受けることによって、自分たちが他とは異なる「一つのかたまり」であることを意識した。(中略)日本はこの時、「日本国」を意識したのである。

モンゴル帝国の興亡<下>

クビライは3回目の日本への遠征も考えていたようですが、帝国内部で反乱が発生し諦めざるを得なくなったそうです。

より大軍を率いる予定だったそうなので、もし現実になっていたら日本の歴史は大きく違っていたかもしれませんね。

上下合わせて450ページ以上ある読み応えある本ですが、モンゴル帝国についてよく理解できる本なのでおすすめです。

同じ著者の「遊牧民から見た世界史」もいい本です。

地中海世界とローマ帝国

引き続き歴史の本です。

「ローマ帝国の歴史には人類の経験のすべてがつまっている」と言われているほど、この大国の歴史は学ぶ価値があるものであると考えられています。


この本は講談社学術文庫の「興亡の世界史」シリーズの1つです。

シリーズのタイトル通り、ローマ帝国ができる前の地中海の覇権争いから始まり、ローマ帝国ができて滅びていくまでの通史がわかりやすく説明されている本です。

ローマとポエニ戦争をしたカルタゴの将軍である「ハンニバル」を丸々1章かけて説明してある点がとても嬉しく、軍人として語られることの多いこの人物を政治家の側面からも考察しており非常に目新しく感じました。

この章は地図や軍をどのように配置したかの図もあって分かりやすかったです。

一方で、三頭政治の箇所で、ポンペイウスやクラッススの説明や、カエサルのガリア遠征についての解説がもう少し豊富だったら個人的には嬉しかったです。

本全体を通して、主要人物の彫像の写真や地図が豊富にあり、ローマの歴史を学ぶのにとても分かりやすい名著だと思いました。

甘いバナナの苦い現実

普段何気なく食べているバナナですが、実はこの果物を日本人が食べるために多くの人が苦しんでいることをご存知でしたか?

バナナ産業をその歴史と共に、多国籍企業、労働者、サプライチェーン、消費者といったさまざまな視点から説明した本です。

この本を読んでから、スーパーでバナナを見るたびに心が痛みます、、、

 
 

日本のバナナはおよそ80%がフィリピンから輸入されており、その98%はフィリピン南部にあるミンダナオ島で栽培されています。

始めの章では、スペインによる統治時代、アメリカの植民地時代、日本軍政下時代とフィリピンの歴史をたどっていき、どのようにしてこの島で大規模プランテーションが始まったのかについて詳しく説明されています。

日本やアメリカの企業が利益を伸ばすために、法の抜け道を探して色々と画策し、競争していたというエピソードは非常に興味深い内容でした。

次の章ではバナナ産業に関わる企業について書かれていましたが、土地やお金や契約について細かく説明されており、内容を理解するのが少し大変でした。

1番強く印象に残ったのは、3章と4章です。この2つの章ではバナナ農場で働く人の劣悪な労働環境と、バナナ栽培に使用される農薬が地元の人に与える影響について書かれています。

彼らは著しい低賃金で働かされています。

フィリピンの標準的な生活賃金を達成するためには、1日8時間の労働に加えて、11時間もの時間外労働をしなければなりません。

しかしそれは現実的に不可能なので、休日を献上して労働日数を増やす必要がありますが、休日労働の手当もありません。

このような時間外労働や休日労働の手当がないことに加えて、離職手当や病気のときの有給休暇も認められていません。

15時間を超えて働く日もしばしばあるそうです。

しかも彼らを雇っている大企業は本来であれば農場で働く人々も正社員と同様の労働条件で与えなければならないのですが、仲介会社を会することで、直接の雇用主とはなることをせず、これを避けています。

労働者たちは訴えをおこし、最高裁で勝つことができましたが、企業は異議申し立てなどをし、責任逃れを続けています。

また、ストライキのリーダーの家が放火されたり、家の近くに薬莢が落ちていたりと、裏から手を回そうともしています。

これは非常に悪質な行為です。

企業が一刻も早く労働環境の改善に乗り出すことを願っています、、、

ただでさえ劣悪な環境で働かされている労働者たちですが、彼らの体を農薬が蝕んでいます。

バナナ農園ではヘリコプターで農薬の散布を行なっているのですが、それが人体に有害で農場の近くに住む人の中には、不妊症となった男性、先天異常で生まれた子供、皮膚のただれや失明が散見されるそうです。

農場で働く人がこのように言っていたそうです。

「日本人を食べさせるためだけに、私たちが犠牲になっている。」

留学中にフィリピンの方々にはお世話になったので、こういう話を聞くと身につまされる思いになります。

最後の章では、消費者である私たちがどのようにバナナを買えば、生産者に優しいのかについて説明されています。

日本では「バランゴンバナナ」が有機栽培のバナナとして有名だそうです。

しかし、バラゴンと市販の有機栽培のバナナを合計しても、全輸入量の1%程度と推測されており、まだまだ広く普及しているとは言えない状況です。

物を買うことは、企業の人気投票によく例えられます。

フィリピンの方を劣悪な環境で働かせ、農薬をみだりに使ってバナナを育てている企業の商品を買うことはその企業に”1票”を投じ、そのような行為を助長させていると言えます。

とはいいつつ、やはり安い物を買いたくなりますよね。

僕もスーパーでは一番安いバナナを常に買っていますし、他の人がそのようにしてても責めることはできません。

しかし、バナナを買う上でこのような話を知っているか、いないかでは大きく違うと思います。

バナナに限らず、今一度普段食べているものがどのようにしてスーパーに並んでいるのか考え直す必要があるのではないでしょうか。

鳴かずのカッコウ

ノンフィクションばかり紹介してしまったので、最後は小説を。

普段は目にしたり、耳にしたりすることが全くない「公安調査庁」を題材にした小説です。

著者はテレビなどでよく見かける手嶋龍一さん。11年ぶりの新作小説らしいです。


スパイと聞くと、ミッションインポッシブルや007などのイメージが強く、銃撃戦をバチバチやったり、かっこいい車でカーチェイスしたりする情景が思い浮かびます。

しかし実際のスパイ活動は、そのようなイメージとは大きく異なることがこの小説を読んでよく分かりました。

諜報活動は地道な下調べや、尾行、潜入調査(戦闘などは無し)といったような派手さの無いものですが、手嶋さんは素晴らしい書き手で、ドキドキしながら読むことができました。

また、主人公が巻き込まれていく事件が色々な国が関わるスケールの大きいものであったので、それもこの小説を面白くしている1つの要素だと思います。

主人公をはじめ、小説の登場人物は人間味あふれる個性のある人たちで、彼らのやりとりも楽しみながら読むことができました。

公安調査庁をテーマにした小説はあまり無いと思うので、何か目新しい小説を探している人にはうってつけだと思います。

表紙のデザインも最高ですね!


どれも面白いので是非読んでみてください!

ちなみに本は以下の記事でも紹介しています。

獣医学生の本棚