「ポスト・ヒューマン誕生」を読んで ~ 人間が”新人類”となる日~

「ポスト・ヒューマン誕生」を読んで ~ 人間が”新人類”となる日~

「ポスト・ヒューマン誕生」は、レイ・カーツワイルがコンピューターと人間が融合した”新人類”が誕生する「特異点」を、いつ、どのような過程で迎え、この人間社会がどのように変化していくかについて書いた本です。
この本を読むと誰しもが「そんなことありえない」「荒唐無稽だ」と考えると思います。

ですがこの本の著者「レイ・カーツワイル」は「現代のエジソン」とも呼ばれる、アメリカでは大変有名な人です。
過去にはワールド・ワイド・ウェブの出現、コンピューターがチェスのチャンピオンに勝つこと、インテリジェント兵器が戦争の主役になることをみごとに予言しています。
12の名誉博士号をもち、3人の米大統領から賞を贈られているほどのすごい人です。
かのビルゲイツも「人工知能の未来を予言しうる最高の人物」と称賛しています。

第一章から八章まであるので、それぞれの章の骨子を書きました。
そして最後に、自分なりの感想や今後の未来について想像を巡らせてみました。

第一章
六つのエポック

出典: https://beventuresometrips.co.uk/mobile-phone-today-what-tomorrow/

人類の進化は指数関数的で線形ではありません。

進歩の率は10年ごとに2倍になっています。

また、進歩の率は年々上昇しているので今後はさらに短くなっていきます。

つまり今まで100年かけてきたテクノロジーの進歩はもっと短い時間で成し遂げることができるようになり、人間のテクノロジーは急激に進化していくようになっていきます。

上にあるグラフを見てください。
縦軸が何を表しているのかは分かりませんが、ここから分かることは、「printing press(印刷機)」ができてから、「telescope(望遠鏡)」ができるまでには、200年も要したのに、最近ではインターネットの誕生から、YouTube、Googleが登場し、スマホが普及するといった進歩が10年または数年の単位で進んでいるということです。

さらに長いスパンで見ると、生命の誕生から細胞の発生までに20億年もの長い年月が必要だったのに対し、パソコンからインターネットの登場にはたったの14年しかかかりませんでした。

おばあちゃん世代の10~20歳の間に起こったことと、今の若者の10年に起こった変化は後者の方がスピードが速くいろんなことが起き、日々変化しています。

筆者は生物及びテクノロジーの進化の歴史を、6つのエポックに分けて概念化しました。
特異点はエポック5で始まり、エポック6において地球から宇宙全体に広がっていきます。

エポック1

最初のエポックではビッグ・バンから数十万年後に原子が形成され、その後分子が形成されて化学的過程が始まりました。

エポック2

数十億年前、炭素ベースの化合物が複雑化し、生命が誕生します。
そして、自分の情報を保存するためにDNAが生まれました。

エポック3

DNAに導かれての有機物が進化進化していき、感覚器を持ち、外の世界から情報を得て、自身の脳と神経系に情報を蓄えることのできる生物が作り出されます。
動物の一部がパターンを認識できる能力を持ち、原始人類もこの時代に誕生します。

エポック4

理性的な思考と、他の指と異なる方向を向く親指のおかげでテクノロジーを作ることができるようになりました。
最初は原始的な石器から始まり、次第に高度な道具となっていき、ついにはコンピューターなどの複雑なものを作れるようになります。

ちなみに今私たちがいる時代はここです。

エポック5

これから数十年先(おそらく2040年代)に特異点を迎えます。
そこでは人間と人間が作り出したテクノロジーが融合し、”新人類”が誕生します。
特異点に至れば人間は格段に賢くなり、病気や寿命に悩まされることもなくなります。

エポック6

人間のテクノロジーが宇宙に飛び出し、太陽系の外まで広がっていきます。

エポック4までは地球の歴史なのでここでは説明しません。
エポック5は本書では以下のように表現されています。

特異点に到達すれば、われわれの生物的な身体と脳が抱える限界を超えることが可能になり、運命を超えた力を手にすることになる。

ポスト・ヒューマン誕生 レイ・カーツワイル

特異点では人間の能力が根底から覆り、変容すると筆者は言っています。
例えば、

・ナノテクノロジーを用いてナノボットを設計し、人口の赤血球を作ったり、脳にナノボットを送り人間の知能を向上できる。
・コンピューターの知能が人間の知能と区別がつかなくなる。
・人間の知能の長所と機械の長所が合体する。
・人間からデータをダウンロードできるようになり、機械は人間社会の全ての知識にアクセスできるようになる。

エポック6ではロボット探査機が宇宙に出ていくということはなくなり、「ナノボット」と呼ばれる超小型の自己複製可能なロボットが宇宙に何兆も出ていき宇宙にナノボットが漂い、人間はそこから情報を受け取るようになるそうです。

未来の機械は生物ではなくても、一種の人間であり進化の次の段階であるため、文明は人間的なものであり続けると筆者は考えます。

第二章
テクノロジー進化の理論ー収穫加速の法則

「収穫加速の法則」は筆者が考えた言葉で簡単に説明すると、進化の速度は本質的に加速していくこと、という意味になります。

最初のコンピューターは紙に手書きで設計され、人の手で組み立てられていましたが、現在は設計の多くをコンピューターが書き、製造はすべて機械が行っています。
このように人間が作り出したものが、また新たなものを作り出すのを促し、またそれが…と言うように、進化の速度は速くなっていきます。

皆さんは「ムーアの法則」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。これは、

「2年ごとに集積回路上に詰め込むことができるトランジスタの量は2倍になる」

というものです。
実際、Intelのプロセッサに内蔵されているトランジスタの数は2年ごとに2倍になっています。

上のグラフ(縦軸が対数になっていることに注意してください)を見ても分かるようにコンピューターの発展には目を見張るものがあります。

トランジスタのコスパもかなり上昇しており、1968年には1ドルで1個のトランジスタしか買えませんでしたが、2002年には1ドルで約1000万個のトランジスタが買えるようになっています。
半導体の加工寸法は5.4年ごとに半分に縮小しているそうです。

コンピューティングのコストパフォーマンスも2倍になるまでに20世紀の初めには3年かかりましたが、中盤では2年、現在では1年となっています。

コンピューティング能力が上がるとそれに影響を受けて他の分野の成長率ももちろん上がってきます。

例えばヒトゲノムの解読は1990年に開始されましたが、当時の解析スピードではプロジェクトを完了するのに何千年もかかると言われていました。
しかし、実際は13年で終了しました。
また、この際は何十億ドルものお金が使われましたが、今日では100ドル程度の金額でたった1日で自分のDNAを全て解析することができます。

インターネットの成長も目覚ましいです。
1990年代の半ばまでは、インターネット上にデータはほとんどありませんでした。
しかし現在はデータの量は毎年2倍の速度で爆発的に増えていっています。

このようにテクノロジーが進歩すれば経済も当然成長していきます。
ハイテクベンチャーの取引額は20世紀の100倍以上にもなり、労働者1人あたりの生産性も上昇しています。

第三章
人間の脳のコンピューティング能力を実現する

出典: https://www.bbc.com/news/science-environment-24232896

筆者はエポック6が来るまでに、分子レベルの3次元コンピューターが登場すると予想しています。

最有力なのは半導体の論理回路がカーボンナノチューブでできたものです(上の写真)。
カーボンナノチューブとは炭素原子が6角形となり、筒状に連なったもので、その直径はわずか1ナノメートルです。

他にも原子を用いたハードディスクである「原子メモリドライブ」は今と同じくらいの大きさで100万倍以上のデータを保存することができます。

とても興味深いのが「DNAコンピューティング」です。
このコンピューティングの目的は問題を解決することです。

少し複雑だったのでイラストを作成して上に貼りました。
まず短いDNA鎖を作り、ひとつの遺伝コードに一つの記号を割り当てます。
これをPCRで何兆倍にも複製して、試験管の中に入れると勝手に長い鎖が形成されます。
1つ1つの鎖は異なる文字列となっており、それぞれが可能性のある1つの回答になっています。
次に基準に合致しないDNA鎖を破壊するように設計された酵素を加えると間違ったDNA鎖は無くなり、正しい回答の鎖だけが残ります。

このコンピューティングは以下のような特徴を持ちます。

・何兆もの回答が考えられる問題を同時に検査することが可能であること
・DNAとATPを結合させることで各々のDNAが自分でエネルギーを供給しながらコンピューティングをすることができるということ

研究ではスプーン2杯のDNA液を用いたコンピューティングでは毎秒660兆回の計算をたった5000万分の1ワットだけで行うことができたそうです。

他にも電子のスピンを利用した「スピントロニクス」や、情報を光子に符号化した「光コンピューティング」、そして聞いたことのある人も多いと思いますが量子力学を応用した「量子コンピューター」などが開発されています。

本題の人間のコンピューティング能力についてですが、これは目に入ってくる情報の量と網膜のサイズを比較して考えたり、人間が両耳に入ってくる音の時間差で物の位置を特定することなどから推定されています。

それによると人間は10^16cpsものコンピューティング能力を持つと考えられています。
(cpsは”count per second”の意味で毎秒この回数だけ計算することができるという意味です)

また、人間の記憶容量は10兆ビット程度であるとされています。

これらを鑑みると、人間の脳の機能を模倣できるハードウェアが2020年代におよそ10万円程度で手に入れることができ、人間の脳の機能をもつソフトウェアがその10年後にでて、2030年代には1000人分の人間の脳に匹敵するコンピューティングが、2050年代には地球上のすべての人間の脳の処理能力を超えるコンピューティングが10万円程度で手にれるようになると考えられています。

2030年に人間と同等の賢さのコンピューターができますが、これは特異点ではありません。
なぜなら、人間の知能を根底から拡大するには至らないからです。

コンピューターにより、人間の知能が大きく変化するのは2045年頃と考えられています。

第四章
人間の知能のソフトウェアを実現するー人間の脳のリバースエンジニアリング

脳のリバースエンジニアリングとは、
「脳の内部をのぞき込み、モデル化し、各領域をシュミレートすること。」
と本に書いてあります。
簡単に言えば、脳の機能をコンピューターで再現するということですかね。

脳をスキャンする方法としては、fMRI(機能的磁気共鳴画像装置)、MEG(脳磁気図)、PET(陽電子放射断層撮影)があります。

しかしこのような頭の外側から脳のスキャンを行う方法には限界があります。
そこで現在研究の進んでいる分野がナノテクノロジーを使った、内側からスキャンする技術です。

ナノボットは赤血球と同じかそれより小さいサイズなので、脳の毛細血管に入り込みナノボット同士で通信し、非常に近いところから脳をスキャンできると期待されています。
視覚、聴覚、小脳などの研究が進んでおり、かなり再現されているらしいです。

しかし、人間の脳にはもっと複雑な機能があります。それは感情道徳に関するものです。
音楽や美しい絵画で感動したり、冗談を理解したりする脳の数多くある機能の中でもかなり高度なものです。
また、喜怒哀楽などの感情も機械で再現するのはとても難しいそうです。

しかし、様々な研究が進みメカニズムが解明されつつあります。
筆者は2020年代には脳全体のリバースエンジニアリングができると考えています。

脳の研究が進むと今度は脳と機械を接続することができるようになってきます。
そうなると、データなどを脳に直接送信することができるようになったり、パソコンなどを考えるだけで操作することができるようになるとされています。
よくSF映画などで見る光景ですね。

これがさらに進むと、人間の脳をアップロードすることが可能になります。
控えめに見積もっても2030年代の終わりにはできるようになっていると考えられています。
これが実現すると、自分の意識を非生物的なものに移し替えたり、新たな身体に移し替えたり、サマーウォーズみたいにバーチャル世界に意識を飛ばして、そこで他の人と交流したりすることができるようになります。

ですが、コンピューター上にアップロードされた「自分」は本当に自分なのでしょうか。
目の前に自分の意識をインストールした自分そっくりのロボットがいたとしたら、それを自分と同じだと思うことができるでしょうか。
筆者は他の章で哲学を交えながらこの問題について考察していましたが、書き始めるとかなり長くなるので気になる人は是非本を読んでみてください。

第五章
GNRー同時進行する三つの革命

GNRは、

Genetics     遺伝学
Nanotechnology   ナノテクノロジー
Robotics     ロボット工学

を表しています。
特異点への到達にはこの3つの発展が不可欠だとされています。

遺伝学

人をはじめ多くの生物は、DNAの塩基配列によってアミノ酸が作られ、それが鎖となり折りたたまれて3次元の構造を持つタンパク質となり、それが体を作り上げています。

植物などでは少し前から盛んに行われており、病気に強く、より多くの収益を見込めるように遺伝子を変えていました。
遺伝子組み換え食品という言葉を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

近年、この人間の設計図であるDNAを操作できるようになりました。

これにより多くの病気の発生を制御したり、心臓疾患や糖尿病などを遺伝子レベルでタンパク質の発言を制御することでコントロールできると考えられています。

特に注目されているのが若返りです。

染色体の末端にはテロメアという配列があり、それは細胞が増殖するたびに短くなっていきます。
このテロメアが無くなるとそれ以上増殖することができなくなり、その細胞は死に、個体の死につながります。
テロメアを作り出す「テロメラーゼ」という酵素があるのですが、これは生殖細胞・幹細胞にだけ存在します。
なので仮にテロメラーゼを普通の体細胞で発現させることができれば、永久的に増殖できる細胞を作ることができ不老不死も達成できると考えられています。
しかし、このテロメラーゼという酵素を実は癌細胞も持っています。
なので癌細胞の発生を抑えながら、正常細胞を不死身にできるかということが今後の問題になってきます。

この遺伝子の操作技術が進歩していくと、映画「ジュラシックパーク」のように絶滅した動物を復活させることもできると考えられています。
絶滅した動物を生き返らせるべきなのかということは、生態系やほかの多くの観点から議論が必要だと思いますが、個体数が少なくなっている動物を増やすことができるようになれば絶滅危惧種の保全にとても役に立ってくる技術だと思います。

僕が一番注目しているのが食肉です。
クローニング技術によって動物の様々な細胞を人工的に増やすことができるようになってきます。
これによって、家畜無しで動物の肉だけを作り出せるようになってくると考えられています。

こうなるとより効率的に肉を生産することができるようになり、肉の値段はとても安くなります。
畜産業は環境への負担がとても大きいうえに、多くの動物を苦しめているのでこれによってそれらの問題を一挙に解決できることが期待されます。

また上にも書きましたが、肉だけでなく、小麦、米などほかの食べ物もクローニング技術で病気に強いものを作ったり、収量をあげるように品種改良することができます。
これにより、今後一層効率よく食べ物を得ることができるようになり、飢餓問題を解決できると考えられています。

人間のクローニングについても本書では触れられていますが、安全面から不安が残り、また倫理的にも問題があるとされています。
ただ、体の一部を人工的に作ることによって、臓器を交換したり、事故などで失った手足を移植できるようになれば、とても価値のある技術になるのではないでしょうか。

ナノテクノロジー

本書ではとても小さい機械である「ナノボット」が何回も登場していますが、これを作るのがナノテクノロジーです。
いずれは原子レベルの大きさのロボットが誕生すると考えられており、そうなるとそれらを組み合わせることで地球上に存在するものの全てを作れるようになると予想されています。

ナノボットの原料として有力なのが「カーボンナノチューブ」。
最近、ナノチューブでとても小さいベルトコンベアを作ることができるようになったらしいです。
これにより分子サイズの物質を輸送することができるようなり、電流を制御することで動く向きと速さも調節できます。

DNAもナノボットを作る上でとても期待されている物質です。
DNAはお互いにくっつくことができる上に、それ自身に情報を保存することができるのでナノボットの材料としてうってつけです。
命令によってタンパク質と結合したり、離れたりすることのできる「DNAの手」が発明されたり、DNAで八面体を作ることができるそうです。
その八面体にはタンパク質などの物質を入れることができます。
ウイルスは、外側にタンパク質の殻、内側にDNAやRNAを持ちますが、この技術によって、外側DNA、内側タンパク質のような物質を作ることが原理的に可能となります。
これは「反転ウイルス」と呼ばれています。

また、ナノテクノロジーによってエネルギー効率があがるとされています。
これだけ機械が増えればエネルギーの消費量も急激に増えると予想されますが、実際はナノテクノロジーにより環境への負荷が少ない再生可能エネルギーを手に入れることができます。

具体的には、ソーラーパネルの発電効率が上がったり、軽量で丈夫な素材の開発で車などの乗り物の燃費が上がったり、送電線の輸送効率が上がったりすることが考えられます。
地球のコアの熱から発電する計画もあるらしいです。
そもそも、ナノボットの消費エネルギーはかなり少なくなるように設計されます。

僕は太陽からのエネルギーに注目しています。
太陽からのエネルギーは非常に膨大なもので、仮に100%変換することができるならたった45分で年間の世界のエネルギー量をまかなうことができるからです。
化石燃料を燃やさなくてはいけない火力発電、また安全面で不安が残る原子力発電が無くても安定的にそして環境に優しくエネルギーを供給できるようになるかもしれません。

ロボット工学

ここではロボット工学とは「AI」のことを指しており、GNRの中で最も重要なものだと筆者は言っています。

AIは近いうちに人間の知能を大きく上回ります。
優れたAIが誕生すると、AIが自らを強化しさらに優秀なAIが出来上がります。
このサイクルが繰り返し行われ、AIの知能は人間よりもはるかに高くなっていきます。

AIによって、医療・科学・金融・製造業などが大きく発展し、人間が大きな恩恵を受けることになると考えられます。
また、AIが言語を自由に操れるようになり翻訳などの精度が現在と比べて格段に上がります。
今でもSiriやAlexaと会話のようなことができると思いますが、今後はその制度がさらに向上し今よりも多くのことができるようになります。
家の掃除や、運転、調理などもAIがしてくれるようになる時代が来るのではないでしょうか。

第六章
衝撃

シンギュラリティが近づくにつれて人間の生活はどのように変化していくのでしょうか。

今の私たちの体が「バージョン1.0」だとすると、今後は「バージョン2.0」に変化していくと筆者は言っています。
まずは血液をナノボットからなる人工のものに置き換えることができます。
人工赤血球は普通のものと比べて100~1000倍もの酸素を蓄積・輸送でき、これを体内に取り込めば全速力で数十分走ることも可能になります。
また、人口の白血球は本来の免疫系よりも効率的に異物を排除することができるため、感染症の治療がより簡単になり癌にも効果的であるそうです。

動物の臓器の中で心臓はかなり重要なものです。
しかし、年をとってくると様々な病気がでてきたり、心不全によって突然死するなどで多くの死の原因にもなる臓器です。
厚生労働省の統計によると50~80代では、心疾患は癌に次いで2位の死因となっています。
人工心臓を入れる計画もあるようですが、さらに先を行って心臓を完全に取り除くことが考えられているそうです。
血液を人工のものに変えると、血球は自分で運動することができるため、心臓という「ポンプ」がなくても血液が自動的に流れるようになります。

また、人工の血液が体の全ての細胞に酸素をはじめとした必要な物質を届け、不要な物質を回収できるようになります。
すると、酸素と二酸化炭素を交換する肺や、インスリンや消化酵素を作る膵臓など多くの臓器が不要になります。

こうなると体には、骨格・皮膚・生殖器・感覚器・口・食道・脳ぐらいしか残りません。
しかし、骨格は徐々にナノボットによって置換されていき、とても強固で自己修復できるものになっていきます。
皮膚から感じられるもの(質感・温度)は残しておきたいので、皮膚が無くなることもないと思いますが、感度はそのままにしてより強度のあるもので代替されることが予想されています。
近い将来、僕たちの身体のほとんど全てが人工のもので構成されるようになるかもしれません。
そうなったら完全にサイボーグですね。

脳を人工のものに置き換えるのは難しそうですが、脳にもナノボットが入り込み、脳のアップロードや脳からのインターネットへのアクセスが可能になると考えられます。
また五感を刺激することで、かなりリアルなバーチャル環境を体験することができます。
植物状態の患者や、パーキンソン病などの病気もこれによって無くなります。

こうなると病気や事故で死ぬ人が急激に少なくなります。
また上でもすでに述べたように不老不死の研究も始まっています。

そうなると容易に予想できるように人間の寿命はとても長くなります。
この本によると、老化や病気の内、予防可能なものの50%を防げば平均寿命は150年に、90%を防げば500年に、99%ならば1000年を超えるとされ、バイオテクノロジーとナノテクノロジーがさらに発展することによって、死を無くすことができるそうです。

誕生した当初のコンピューターは、空調の効いた部屋で白衣の専門家が管理する巨大な機械で、一般の人にとってはずいぶん遠い存在だった。それが机上に置けるようになったかと思うと、じきに腕で抱えて運べるようになり、今ではポケットに入っている。遠からず日常的に体や脳の内側に入ってくるだろう。

ポスト・ヒューマン誕生 レイ・カーツワイル

人間の体内に機械が入るなんてありえない、と考えている人も多いかもしれません。

しかし、最近ではスマートウォッチなどを着けている人も多いのではないでしょうか。
Googleが開発したワイヤレスイヤホンである”Pixel Buds”はGoogleアシスタントを起動でき、天気予報やニュースを確認できるほか、Google翻訳で会話している相手が言っていることを同時に翻訳することができるらしいです。

コンピューターは置く時代から、持ち運ぶ時代、片手に収まる時代から今では身につける時代になっています。
このように、人間とコンピューターの距離は確実に近くなってきています。

コンピューターができた当初にポケットに入れる時代が来るなんて誰も考えていなったように、体の中にコンピューターが入ってくることを今は想像できないかもしれません。
ですが、確実にコンピューターなどの非生物的なものを体内にごく当たり前に入れる日が来ると思います。

この他にもGNRの発展によって、戦争・学習・仕事・遊びそして宇宙の探査がどのように変わっていくかについても本には書かれています。

第七章
わたしは特異点論者だ

この章では主に哲学的なことが書かれています。
体のほとんどが機械によって置き換えられたら、その人は人間なのでしょうか?それとも違う種類の生物になるのでしょうか?
そもそもすでに生物という定義には当てはまらない存在になっているかもしれません。

また、脳のアップロードが可能になり他の体に自分の意識がうつされたとしたら、その”自分”は今の自分と全く変わらない存在なのでしょうか?

人工知能が賢くなるにつれて、彼らが自分にも感情や意識があると主張する日が来るかもしれません。

このように考えていくと、自分とは?意識とは?という問題に突き当たります。
この第七章は36ページしかなくて一番短い章なのですが、説明するのがとても難しいと共に、とても考えさせられました。
人それぞれ考え方、捉え方は異なると思うので、自分で一度読み、考えて、自分なりの考えを持つことが重要だと思います。

第八章
GNRの密接にもつれあった期待と危険

テクノロジーが進歩するにつれて、病気を簡単に治すことができるようになり、より早く遠くまで行けるようななり、そして離れた人とでもコミュニケーションがとれるようになりました。
私たちの生活はテクノロジーのおかげでとても便利なものとなっています。

しかし、テクノロジーは危険でもあります。

最も想像しやすいのが核なのではないでしょうか。
日本は原爆が落とされた唯一の国です。日本人であればその威力と恐ろしさを十二分に知っていると思います。
核爆弾はいまだに世界におよそ1万5,000基ほどあり、それは地球上の生物を全滅させてもあまりある量です。
東日本大震災の際は、原子炉からの放射能漏れが問題となり、未だに汚染は続いています。

今までに「人間より賢いAI」や「ナノボット」について書いてきましたが、それらを恐れている人もたくさんいると思います。
僕も正直かなり怖いです。
AIが知能と感情を持ったら、人間はなすすべがありません。

筆者はまず初めにナノボットの危険について述べています。
ナノボットの技術を最も効果的に使うために、自己複製の機能が設けられると考えられています。

しかし、ナノボットが何者かに操られ、自己複製の制御もできなくなるとウイルスのように生物を殺していきます。
その攻撃がとても効率的に行われた場合は、地球上の生物は90分ほどで全滅するそうです。
これを防ぐために、ナノテクノロジー免疫システムを整備していく必要があると筆者は言っています。
ただし、それらもハッキングされることで「悪いナノボット」になる可能性は残っています。

AIが人間に対して攻撃し始めたら人間は太刀打ちできないと筆者も認めています。
しかし、AIはその発展の段階で様々な人間の影響を受けるため、私たちの価値観を反映する存在になると考えられています。
つまりAIは道徳心があって、人間を全滅させるような破壊的な行動は起こさないと言っているのですが果たして本当にそうなるのでしょうか?

「だったら作るのを止めてしまえばいい」と考える人もいると思います。
人間はそれを作ることをやめるでしょうか。
答えはNOだと思います。
なぜなら、それを作る段階で多くの企業が競争して大きなお金が動きますし、そもそも僕たちはより優れたコンピューター、より速いインターネット、より高度な医療を求めていくからです。
皆さんも、より安く、遅延なくインターネットを使えるようになり、病気になったら苦痛なく治してほしいと常に願っていると思います。
人間が利益や欲を求める限りAIやテクノロジーはさらに発展していくでしょう。

筆者は最後にこのように言って本を締めくくっています。

テクノロジーは諸刃の剣であり続けるだろう。
それは全ての人類の目的をかなえるほどに巨大な力を表している。
GNRは病気や貧困など昔からの問題を克服する手段を与えてくれるだろう。
しかしそれは同時に、破壊的なイデオロギーにも力を与えることになる。
われわれは防御を強化する一方で、これら加速するテクノロジーを適用して人類の価値を高めるしかない。
たとえその価値がなんであるかについて、全員の合意が明らかにまだできていなくても。

ポスト・ヒューマン誕生 レイ・カーツワイル

この本に書かれていることを”夢物語”だと鼻で笑う人もいるでしょう。
僕もシンギュラリティが本当に来るかどうかは半信半疑なところがあります。

ですが、よく考えてみてください。
15年前、今僕たちの送っているライフスタイルを予想できたでしょうか?

どこからでもインターネットにアクセスでき、友達とのやりとりは全てメールではなくLINE、お気に入りの写真をtwitterやInstagramですぐに世界中の友達と共有ができて、インターネットに動画を投稿してお金を稼いでいる人がいて、買い物もスマホでできちゃう。そもそも”スマホ”って何?
(今では当たり前のYouTubeは2005年に、iPhoneは2007年に誕生しました。)

第二章のところでも書いたようにテクノロジーの進歩は加速しています。
今までよりも速いスピードでこれからの時代は変化していくでしょう。

こんな時代に生まれた僕たちに求められていることは何でしょうか?
それは変化に柔軟に対応していくことだと思います。

そんなこと言われたって、何をすればいいかいいか分からないという人は、身近なところから始めてみてはどうでしょうか。
例えばキャッシュレス決済。
日本も最近は増えている様子ですが、他の先進国と比べるととても低い割合です。
批判が来るのを重々承知で言うなら、政府がキャッシュレス決済を推奨しているというのに、未だに財布を小銭でパンパンにしながら外出する人は明らかに、”変化に柔軟に対応”しきれていない人です。

キャッシュレス決済をするかしないかで人生が大きく変わることはまずないと思いますが、変化に対するその消極的な姿勢は変える必要があると思います。

変えていく必要があるのはライフスタイルだけではありません。
変化を予測して人生設計を立てる必要があります。

就職を控えている人は、20~30年後までその会社・仕事はAIに代替されずに存在し続けているだろうか。
会社を経営している人は、テクノロジーの進歩に合わせて、サービスやプロダクトを柔軟に変えることができるだろうか。
学生だったら、AIが人間に代わっていろんなことをする時代に求められるスキルは何だろうか。また、夢や、やりたいことがあればそれはこれからの社会で求められるものだろうか。

そんなことを考えていく必要があるのではないでしょうか。
しかし、AIによって仕事が奪われるのはもはや時間の問題です。
機械が人間の仕事をするようになったら……と考えたらかなり長くなったので他の記事に書きました。

600ページもある本でしたので、これだけの長文を書いてもこの本の魅力を十分に伝えられたとは全く思いません。
この記事を読んで興味がわいた人は是非この本を読んでみて下さい。
とても長いうえに、内容も難しくて読むのは結構大変でしたが。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考
・「ポスト・ヒューマン誕生」 レイ・カーツワイル NHK出版 2007年
監訳 井上健 共訳 小野木明恵、野中香方子、福田実

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