今年度はコロナの影響のもあり、実家に帰省しなかったので冬休みは部屋にこもって本をたくさん読んでいました。
コロナの患者数も増えてきており、外出を控えている人もたくさんいると思います。
最近読んで面白いと思った本を5冊紹介するので、気になったのがあれば是非読んでみてください。
大英自然史博物館 珍鳥標本盗難事件
2009年にイギリスのとある博物館から約300羽の鳥の標本が盗まれました。
犯人はイギリスの音楽学校に通う大学生。
この事件は少しだけ報道されましたが、ほとんどの人の関心を集めることなく忘れ去られます。
フルート奏者として将来有望だった彼がなぜこのような行為に至ったのでしょうか。
実際に起こった事件の経緯を探る、犯罪ルポルタージュです。
本書の前半では、博物館などに貯蔵されている自然標本がどのように集められてきたかということが説明されています。
「アルフレッド・ラッセル・ウォレス」という博物学者に焦点を当てて説明されているのですが、この人の並々ならぬ標本採集に対する執念には驚かされました。
また、ウォレスはダーウィンと全く同じ時期に進化論の「自然選択説」を考えていました。両者は手紙のやりとりをするほど交流が深かったそうです。
発表はダーウィンの方が早かったために、ウォレスは彼と比べて有名ではないですが、まさかこんな人がいたとは驚きでした。
その次に、羽飾りファッションで多くの鳥が乱獲されたことや、それに異を唱えた人たちの自然保護運動を説明していきます。
自然保護運動は現在も盛んですが、19世紀からあったとは知らなかったです。
このように、自然標本の貴重さや、鳥の羽に対する人々の羨望の歴史などを説明した後に、標本窃盗事件について記していきます。
事件についての著者の捜査を読んでいくうちに、様々な謎が出てきて何が真実なのか分からなくなっていきました。
しかし次々と驚くようなことが明らかになり、最後まで飽きずに読むことができました。
本の中で特に心に響いた文章がありました。
それだけでなく、富と地位を求めて自然界を搾取しまくり、他者が所有していないものを所有したいという欲にかられる男女は昔もいまも変わらずいる。
長期的な英知と短絡的な私欲がぶつかる戦争で、勝ってきたのはいつも後者のようだった。「大英自然史博物館珍鳥標本盗難事件」より
最近では鳥の羽飾りを身につけている人はほとんどいないと思います。
しかし、SNSでよく見られるゾウに乗っている写真やトラと一緒に移っている写真などは、鳥の羽飾りを頭につけているのと本質的には同じなのではないでしょうか。
動物は自分を飾るための存在ではないということを多くの人が意識するべきだと思います。
重力とは何か
重力についての本かと思いきや、それを解明するために発展した現代物理学をその歴史と共に知ることができる素晴らしい本でした。
一番初めの章では重力の不思議な性質が説明され、重力への興味がそそられました。
重力は全てのものに働き、遮ることができないなどとても面白い性質を持っています。
そして、「重力とは何か」というタイトルにもかかわらず、「重力を説明する理論はまだ完成していない」と初めの章であっさりと言ってしまいます。
2章以降では、重力の正体を明らかにする過程で発展してきた、特殊相対論、一般相対論、量子力学、超原理論などがその発展に寄与した研究者のエピソードなどを踏まえてとても分かりやすく説明されています。
残念ながら重力の正体をこの本で知ることはできませんでしたが、現代物理学を僕のような物理に疎い人にでもかみ砕いて分かりやすく説明してくれる素晴らしい本でした。
この著者の大栗博司さんの本で「大栗先生の超原理論入門」も良書なので是非読んでみてください。
敗者が変えた世界史 上
歴史の教科書などでは基本的に勝者が中心で話が進み、負けたり勢力が衰えていった人たちが注目されることはあまりありません。
しかし、この本ではあえて敗者にフォーカスを当て、その人たちの悲しさや、悔しさに満ちた一生が語られます。
第二次ポエニ戦争でローマを苦しめたカルタゴの将軍「ハンニバル」、カエサルのガリア征服に対抗した「ウェルキンゲトリクス」、ローマのリーダーたちを上手に操った「クレオパトラ」、神の啓示を受け男装して百年戦争に参加した「ジャンヌダルク」、コルテスの侵略からアステカを守れなかった「モクテスマ2世」、サンバルテルミの虐殺の指揮をとった「ギーズ公アンリ1世」の6名が本書では紹介されています。
クレオパトラやハンニバルは名前だけは聞いたことがありましたが、実際に何をした人なのかよく分かっていませんでした。
ですが、生い立ちから死ぬまでがとても詳しく述べられていて非常に分かりやすかったです。
ローマの歴史をクレオパトラの視点から見てみるのは新鮮でした。
永遠の0
百田尚樹さんのデビュー作で映画化もされている小説です。
以前から気にはなっていたのですがようやく読むことができました。
特攻で死んだ祖父の生涯を、当時一緒に戦争に参加していた戦友たちにインタビューしながた徐々に明らかにしていく物語です。
主人公は祖父から自分とは血縁が無いということを祖母の葬式の後に聞かされます。
その後、ライターである姉と本当の祖父である「宮部久蔵」がどんな人物であったかを調べるために、祖父を知っている人を訪ねて話を聞くことにしました。
この本の大部分は宮部と一緒に戦争を経験した戦友たちの回想となっています。
最初は、全くの謎に包まれていた宮部久蔵という人物ですが、主人公が色んな人にインタビューしていくことで徐々に明らかになっていきます。
小説を読み進めるうちに僕も主人公と同じように、徐々に明らかになってくる宮部久蔵という人物に対して親近感を抱くようになりました。
そして「絶対に生きて帰る」と言っていた宮部が自ら志願して特攻に行った本当の理由を知った時は驚愕するとともに、非常に感動しました。
小説を読んでこんなに感動したのは久々でした。
また、回想では太平洋戦争を零戦パイロットの視点から詳しく説明されているため、太平洋戦争に対する理解が深まりました。
小説ではありますが、同時に戦争の歴史を学べる素晴らしい本だと思いました。
経済は感情で動く
「経済学」と書いてありますが、内容はそんなに専門的なものではなく、お金に関する心理学のようなものを扱っている本です。
これを読むと「いつもすごい矛盾だらけのことをしているな~」と自分のお金の使い方や選択の仕方を見直すことができます。
本書には、読者に対する様々な問いかけが用意しており、これらに答えることで自分がいかに非合理な選択をしているかを痛感することができます。
本書で取り上げられている問いかけの一つを少し簡略化してご紹介します。
「あなたはとあるカメラ会社の社長です。新型のカメラを開発するためにすでに10億円投資しました。しかし、開発が80%ほど進んだところで他社があなたの会社が予定しているものより機能的なものを安価で発売し始めました。あなたは残り20%の開発に投資しますか?」
このような問いかけがあったとき、85%の人が「投資する」と答えるそうです。
しかし、聞き方を変えて、「他社より機能が劣っているカメラを作るために2億円投資しますか?」としたら、「投資する」と答える人は激減するそうです。
このような場面では、そのカメラの開発をやめて、新たな機能を備えたカメラの開発などにお金を使った方が合理的です。
しかし、すでにお金を使ってしまったことに対しては諦めがつかず、損をすると分かっていてもさらに投資してしまい、結局損失を増やしてしまうことがよくあるのです(「コンコルドの誤謬」といいます)。
これは一例ですが、選択を迫られる様々な場面でついついやってしまう様々な非合理な過ちをこの本では紹介しています。
商売をする人や、重要な決定をする立場にいる人は読んでおくといいかもしれません。
自分の感情に騙されずに、論理的な考えをする力が身に付くと思います。
どれも面白いので是非読んでみてください!
ちなみに本は以下の記事でも紹介しています。
獣医学生の本棚