2年生 〜終わらない解剖実習〜
畜大の獣医学生にどの学期が一番大変だったか、と質問すると2年前期と答える人が結構います。
これには理由が2つあって、1つ目は難しいテストが多いこと、2つ目は暇だった1年後期とのギャップが大きくて急に忙しくなるからです。
2年前期で習う主な科目は以下の通りです。
- 解剖学、組織学
- 生理学
- 生化学
使用した主な教科書は以下の通りです。
それぞれさらに細かく分けられ、数科目に分けられます。
これらの科目はどれも獣医学の基礎的なものであるため専門科目において一番初めに習うんです。
僕が苦戦したのは解剖学、組織学。
解剖学では動物の骨、筋肉、血管、神経、内臓などを学びます。骨の小さい突起の名前とか、複雑に分岐する血管を覚えるのは苦労しましたが、何より種差を覚えるのが大変でした。
当然のことですが、動物種が変われば体の構造も変わってきます。
獣医の国家試験では主に牛、馬、豚、犬、猫(鶏)が聞かれるのでこれらの動物の違いを把握する必要がありました。
例えば、牛にはあって馬にはない骨や血管だとか、馬と豚にはあって牛や犬には無い構造、はたまた肺葉の数なども動物によって異なります。
組織学は顕微鏡などで観察される細胞や組織の構造を学ぶ教科です。こちらでは動物ごとの違いはあまりないですが、覚えることは多かったです。
2年前期で解剖学と組織学のテストは2回あったのですが、1回目のテストはとても難しく、クラス40人中7人しか合格しませんでした。ジェノサイドですね。
僕自身、結構テスト勉強頑張ったのに落ちてしまい残念でした。といっても留年することはなく、追試を行ってくれるのでそれで全員合格しましたが。
生理学もかなり曲者で必死に勉強しました。こちらもテストが難しく、追試になる人が大勢いました。
2年前期は最初の方こそ、「やっと獣医の勉強ができる!」と嬉しがっていたのですが、テスト勉強が大変ですぐに嫌気が差してしまいましたね笑
寮には僕を含めて獣医同期が4名いました。
テスト勉強はほとんど寮の食堂で行っていたのですが、同期が来る時もあり一緒に勉強したり分からないところを聞いたりしていました。
勉強以外にサークル活動の方も忙しくなりました。1年生の時は参加さえしていればよかったのですが、2年生になると色々な仕事を任されるのでやることが増えました。特に自分は「ゼニガタアザラシ研究グループ」「日本獣医学生協会(JAVS)」「空手部」に入っていたので、4月の新歓時期などは非常に忙しかったです。
勉強とサークルで慌ただしくしているうちに、夏休みになりました。
テストが終わった翌週にJAVSのメンバーで旭山動物園に行きました。動物園には帯広から車で3.5時間で着きます。少し長めのドライブです。
獣医2年では夏休みの1週目に北大での実習があります。1年目は北大生が帯広に来たので2年目は逆に僕たちが札幌に行くっていう感じです。
実習といっても実験とかをするわけではなく、さまざまな分野で働いていらっしゃる獣医師を呼んで仕事の話をしてもらうという内容です。
獣医は動物病院で働いている”動物のお医者さん”というイメージを持つ人が大半だと思うのですが、それは多くある職種の1つに過ぎなくて、数多くの仕事があります。
恥ずかしながら2年生の時点では僕も大動物(牛・馬)の獣医、小動物(犬・猫)の獣医、動物園の獣医ぐらいしか知らなかったので、この実習で公衆衛生や製薬などの企業で働く獣医がいると知って視野が広がりました。
また、北大の興味のある研究室にいって先生とお話しできるという時間も設けられていました。2年生の時点では卒業研究のテーマは無論、どの研究室に行きたいのかなんて全然考えていなかったので、自分の興味がある野生動物に関連する研究をおこなっている研究室にいってお話を伺いました。
この実習から帰ってくるとすぐに屋久島に向かいました。
ウミガメ調査のボランティアに参加するためです。
2週間滞在し、毎日7:00~8:00と18:00~22:00で調査を2回行っていました。夜の調査では真っ暗闇の中をライトの光だけを頼りに、砂浜に深さ約70cmの穴を手で5,6個掘り、それぞれの穴でふ化したタマゴの殻の数を数えるというものでした。砂浜なので掘った穴が崩れ、何回も掘りなおすことが多くあり、めちゃくちゃ疲労。タマゴも1つの穴に100個以上あるのでその数を数えるというのは非常に骨の折れる作業でした。
調査期間中は他のボランティアの人と共同生活をしていましたが、お互いに励まし合いながら協力して調査を行ったのもいい思い出です。
屋久島から帰ってくると、また数日後にはアザラシの調査で道東の方へ向かいました。僕の2年の夏休みは北大実習→ウミガメ→アザラシでほとんど終わっちゃいました笑
そして後期が始まります。
使った主な教科書は以下の通り。
2年の後期は難しいテストはほとんどありませんでした。大変だったのは解剖実習です。
前期は座学で動物ごとの骨や筋肉について学んだので、後期は実物を用いてさらにその知識を深めます。
なぜこの実習が大変だったかというと時間が非常に長かったからです。
解剖実習は全て、昼休み後の13時から始まります。実習室に行くと動物は見当たりません。しばらくすると生きた状態の馬が2頭運ばれてきます。この実習は動物を安楽殺することから始まります。健康な動物の命を奪う訳ではなく、農家さんで廃用となったものです。
動物が絶命したら頸部の血管を切開することで血抜きを行います。これをしないと、解剖中に血がたくさん出てしまい観察しづらくなるんです。
そうこうしているうちに、すでに1時間半ほど経過しています。ここから実習スタートです。
クラス40人で動物は2頭いるので半分ずつに分かれます。まず初めに代表者何人かで皮を剥ぎとります。その後、先生が解剖用の大きな包丁を用いて筋肉を切り離していき、都度その筋肉の名前を教えてくださるのでそれをみんなで観察します。
牛や馬はとても大きいので、先生も一苦労です。このようにして体幹、前肢帯、後肢帯の筋肉の説明が終わったら、胸腔・腹腔を切開して内臓の観察を行います。この時点で17時とか18時だったと思います。先生も大変ですが、学生もずっと立ちっぱなしなので大変です。
これが終わると数人のグループに分かれてそれぞれ1つの臓器や四肢の1本を担当し、それについて自分達で切開を加えながら詳しく内部の観察をし、最後に他のクラスメイトに向けて自分達で解説を行います。
最終的に実習が終わるのは21時とか22時でした。13時開始だったので8~9時間に及ぶ長さです。外に出るともう真っ暗でした。実習が始まる時間にはまだまだ明るかったのに、、、
このようなハードな解剖実習は11月と12月に行われました。しかし、当然のことながら授業は解剖以外にもあるので、それらの科目のテストがあります。なので解剖が終わって夜遅くに帰ってもテスト勉強をしなければならない日もありました。
テスト→解剖→テスト(翌日)なんていう大変な時もありました。今思い返すとよくやったな〜と感じますね。
年が変わって1月、2月になると実習は楽にはなりましたが、学期末でテストがたくさんありました。2月だけで7個もありました。それぞれの難易度はそこまで高くないのですが、量が多くて大変でした。
また、2年の後期からゼニ研の代表となったのでサークル関係でやらなければならないことも多く、加えて、寮のイベントや仕事などもあり、非常に忙しかったのを今でも覚えています。ですが3年生になるとさらに大変になると後から知るのですが、、、
話は変わりますが2年生の4月から留学を検討しておりそれに関する情報収集をしていました。
授業の休み時間なども海外の野生動物保護施設をネットで検索し、不慣れな英文のサイトを根気よく読んでいました。テストがあまりない時などを利用して、目星をつけた施設にメールを送り、アポをとっていました。
僕が応募した奨学金は自分で留学計画を立てる必要があり、それにまつわる書類を一次審査で提出する必要がありました。なので、12月と1月は授業の合間などで海外の施設とのメールのやり取り、書類の作成などにも奔走していました。
留学の準備などは他の記事でも書いてあるのでそちらを参考にしてください。
トビタテ!留学JAPANを終えて ~留学計画の作成から合格、事後研修まで~このようにして忙しかった2年生も終わりました。2年と3年の間の春休みはサークルの新入生の勧誘の準備などで慌ただしくしており、あまりゆっくりすることはできませんでした。
3,4年生については「帯広畜産大学で獣医学を学んだ6年間 その2」で書いています。
帯広畜産大学で獣医学を学んだ6年間 その2