哺乳類と違う!?鳥の独特な肺について獣医学生が解説

陸上に住んでいる動物の多くは酸素を吸ってそれを元にエネルギーを作り、二酸化炭素がその結果生じるので息を吐いて体の外に出します。

この酸素と二酸化炭素の交換を行う臓器が肺です。

鳥も哺乳類も陸上に住む動物なので同じ構造の肺を持っていると考えがちですが実は異なっています。

鳥は動物の中でも最も効率的な肺を持ちます。

なぜなら飛ぶことはとても酸素を必要とするものですし、鳥によっては酸素濃度の薄いとても高いところを飛ぶものもいるからです。

また、多くの鳥はとても小さいです。これは飛ぶことにおいてとても有利ですが同時に熱が体内から逃げやすいというジレンマを抱えています。

そのため熱を発生させて体温を維持するために行う代謝への酸素も多く必要です。

鳥が飛ぶのに使う筋肉はとても多くの酸素を消費し、それと同じ量の二酸化炭素も出すため素早くそれらを取り除く必要があります。

今回は鳥の面白い肺と呼吸の仕方について説明していきたいと思います!


呼吸の仕方について知る前に、まずは気嚢(きのう)という器官について知る必要があります。

これは哺乳類には見られないものです。

鳥の体の主要な部分のほとんどはこの気嚢とつながっています。

気嚢の位置は下の画像をご覧ください。

気嚢は呼吸の際に空気を送るためのポンプとしての役割体重を軽くする役割を持ちます。

実はもう1つ大切な役割があります。

それは体温を下げることです。

筋肉を動かしたり高温の場所にいれば体温が上がります。

鳥の体は羽毛で覆われているので熱はこもりやすいですが、鳥は汗腺を持ちません。

そこで気嚢の出番です。

体の中に広がっている気嚢に空気が通る際に、その壁を通じて体温が吸収されます。

気嚢の壁面は湿っておりそこに空気が流れ込むことでその水分が蒸発し熱が発散します。

これによって鳥の体温が下げられます。


哺乳類や爬虫類の肺では呼気と吸気は同じ道を通ります。
そのため肺の中には多少の古い空気が残っています。

しかし、鳥では呼気と吸気は異なった経路を通り空気の流れが常に一定です。

加えて、血液は空気の流れとは逆方向に流れます

これによって鳥は効率的に呼吸をすることができます。

また、鳥は哺乳類と異なって横隔膜を持たず、肋間筋(肋骨の間の筋肉)を使って呼吸しています。

以上のことを踏まえて鳥の呼吸の仕方について説明していきます!


鳥の呼吸は大きく4段階に分けられます。体内に入った空気が体外に出るまでに吸気と呼気を2サイクル行う必要があります。

Step1(黒矢印)

空気を吸うことにより気管、気管支を通り肺に空気が到達します。

この際に後気嚢も拡張するため肺を通過した空気は後気嚢に入ります。

Step2(黒矢印)

空気を吐き出す際に、後気嚢に入っている空気は肺に送られます。

空気はとても細い管を通りこの際にガス交換が行われます。

この管では血液は空気の流れとは反対に流れていますが、このために効率の良いガス交換を行うことができます。

Step3(白矢印)

次に空気を吸い込む際に肺の中の二酸化炭素を多く含む空気は前気嚢に移動します。

Step4(白矢印)

空気を吐き出す際に前気嚢も収縮し、その中の空気は外へと送り出されます。

上の模式図は単純で分かりやすく、よく説明で使われるのですが、体内でどのように空気が移動するのかいまいち想像しづらいと思います。

下の図をご覧ください。

鳥の体内ではこのような空気の流れとなっています。

ここで気管支から空気が後気嚢に流れる際にガス交換が行われる細い管に行かないのはなぜかという疑問が生じます。

気管支の上流に狭くなっている箇所があり、そこを通過すると空気の流れがとても速くなります。

そのためにそれらの気管支を通過して後気嚢に到達します。

さらに気になる人は「空力的バルビング」で調べてみてください!


多くの鳥類学者は飛翔時の翼の運動と呼吸には関係があると考えていました。

鳥の胸筋はとても大きく収縮時に気管を圧迫するため、明らかに飛ぶことは呼吸に影響します。

これは鳥の癒合鎖骨と関係してくるので他の記事で書きたいと思います!


哺乳類と全然違って本当に興味深い仕組みをしていました。

今度鳥を見る際は、「気嚢膨らませてるのかな~」のように想像してみるも楽しいかもしれませんね!

最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)

参考
“Manual of Ornithology” Noble S. Proctor & Patrick J. Lynch Yale University Press

2 COMMENTS

和田

鳥は羽を広げる(羽ばたく)ときに、左右の羽を上下に同時に動かすために繋がっている。

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