アジアゾウを獣医学生が解説!

タイを離れ、現在はケニアでサルを保護している今日この頃です。

タイの施設でアジアゾウの世話をしていたのですが、これがとても興味深い動物であるとともに、人気であるがゆえに様々な問題を抱えているのでご紹介したいと思います!

アフリカゾウとの違いは↓の記事にまとめました!

生息地

アジアゾウはインド、ネパール、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ボルネオ、スマトラの森林に断片的に生息しています。かつては中国にもいましたが絶滅してしまいました。

開けた草原や、沼地、サバンナなどに生息しています。

群れでの過ごし方は雌雄で異なります

ーメスー

群れには家母長がいます。
家母長は群れで最も高齢のメスのゾウがなります。

彼女が死ぬと群れの中で次に高齢のメスのゾウが家母長となります。
子供が生まれると子育ては母親だけではなく、群れのメス全員で行います

ーオスー

オスは成長するとと徐々に群れから離れていきます。

群れの端の方で過ごす時間が長くなり、最終的に群れから完全に離れます。

オスのゾウは単独で行動するか、5頭以下の小さな群れを形成します。
群れを形成する場合でもメスのように固まってはおらず、メスの群れを探すためにお互いに距離をとって行動しています。

生殖

アジアゾウは発情期を持たないという点で独特な生殖様式を持っていると言えます。

メスのゾウは12~20歳の間に交尾をしはじめるようになり、50歳以降は妊娠できなくなります。生涯でおよそ7頭の子供を産むとされています。

妊娠期間は19~22か月とかなり長く、生まれてくる赤ちゃんは体高およそ1mで体重は100kgを超えます。


オスのゾウは生殖期になるとmusth(またはmust)という状態になります。
攻撃的になることと、性ホルモンであるテストステロンの量が急激に増えることが特徴です。

たいていオスは群れのすべてのメスと交尾を行います。

オスのゾウは10代のうちに成熟し交尾できる状態となっているのですが、体の大きさがメスと比べてまだ小さいため、30歳を過ぎてから交尾をし始めるようになります。

また最近の研究では高齢のゾウほど積極的に交尾を行うそうです。これはアフリカゾウでの研究ですが、アジアゾウにもあてはまるのではないでしょうか。
詳しくは以下のページをご覧ください!

「高齢ゾウほど交尾に積極的、50代はフル回転、研究」 ナショナルジオグラフィック日本版
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/070400390/?fbclid=IwAR0Abgf2BXSYQ62YXX3whQTwW9Q4yWnJ3AGroUMHybZAOKR2K7tthgAZL0U

赤ちゃん誕生!

赤ちゃんが生まれると群れのメス全員で面倒を見ます。

群れの中で最も赤ちゃんに関心を示すのは2~12歳の若いメスのゾウです。これらのゾウが赤ちゃんを見守ったり一緒に遊んだりすることで母親が休みを取ることができ、十分に母乳を作ることができます。

赤ちゃんは生後数時間で歩けるようになります。
しかし、母親のサポートなく一人で草原を歩けるようになるまでには3か月かかります。


赤ちゃんは少なくとも3歳まで母乳を飲みます。ちなみに、ゾウの母乳はとても栄養価が高く低脂肪(0.63~6.2%)です。
9か月になるころには、食事の40%は植物となります。


他の動物の赤ちゃんと同様にゾウの赤ちゃんも生まれた時の視力はとても悪いですが日に日に見えるようになってきます。赤ちゃんは鼻でにおいをかいで視覚以外の情報を得ています。


鼻を自由自在に操れるようになるまでには時間がかかります。最初はただ振ることしかできませんが、数週間すると小さなものをつかめるようになるまでコントロールできるようになります。

6か月もたつ頃には鼻を使って水を飲めるようになります。

ゾウといったらこれ!
ゾウの鼻

ゾウの鼻は「ゾウの手」とも呼ばれています。

これは鼻と上唇がくっついて進化したものだと考えられており、150,000個以上の筋肉で構成されています

アジアゾウの大人は鼻に8.5Lもの水を貯えることができます。

鼻の先端には振動を感じるための2種類の毛や、知覚神経、そして振動を感知する受容体であるパチニ小体が多く分布しています。

感覚は大変敏感で0.25mmの溝を感知することもできるそうです。

また、ゾウの鼻腔ではタービナル(鼻腔の渦巻き型の骨)が7個あり(イヌは5個)、1つのタービナルには嗅覚神経が数百万個あります。
ゾウの嗅覚が優れているのはこのためです。

匂いで他の個体のシグナルを察知したり、鼻で他の個体に触れることで自分の感情を伝えることもあります。
このように鼻はゾウにとってコミュニケーションをとる重要な手段でもあります。

地面を鼻で強くたたいていることがありますが、これは怒りや不快感を表しているときです。

ゾウが泳ぐ際は鼻はシュノーケル代わりとして使われます。

またゾウが歩いているときにぬかるんでいるところや、不慣れなところでは鼻で地面をたたいて歩けるかどうかを確かめます。

歩けることが確かめられると、前足を踏み出し、後ろ足は前足と全く同じところを踏みます。

ゾウの歯

ゾウは大きな歯を4本しか持たず、歯がすり減るにつれてそれらは生え変わります。

6本目の歯がすり減って無くなった時に寿命を迎えます。なぜらなもう食べることができないからです。
少し悲しいですね…

ゾウの骨

ゾウの骨の数は全体で300個程度です(人間は200個程度)。

象牙について

オスのゾウは1.5m~1.8mもの長い象牙を持ちます。

アフリカゾウは雌雄ともに象牙を持ちますが、アジアゾウはオスのみ持ちます。まれにメスでも象牙を持つものや、オスなのに持たないものも存在します。

生まれた時に生えている象牙はいわば乳歯のようなもので5cm程度にしか成長しません。

赤ちゃんが2歳になるまでにそれは抜けてしまいます。

そのあとに生えてくる牙がいわゆる象牙です。
このような牙を持つ動物はゾウの他にセイウチがいます。

象牙の役割としては、穴を掘る、けんかや重いものを引っ張るなどがあげられます。

また、話は少し変わりますが象牙は今とても問題となっています。

これはアジアゾウではなくアフリカゾウなのですが、象牙を狙って多くのアフリカゾウが殺されています。すでに絶滅の危惧にあるのにも関わらず密猟のために殺され続けて個体数が減少し続けてています。

ここで注目していただきたいのが、この原因の一端が日本にあるということです。

日本では書類などを書くときにサインの代わりにハンコを使用しますよね。このハンコに象牙がたくさん使われているのです。

海外の多くの国ではすでに象牙市場は閉鎖されています。ですが日本は未だに象牙の売買を行っているのです。

日本から違法に輸出も行われています。
東京オリンピックも控えている中、日本の対応が世界中から注目されています。

できたらご自分でネットで調べてみて欲しいです。
中にはショッキングな画像もありますが、日本で象牙のハンコが使われ続けているせいで日本から遠く離れたアフリカで何の罪もないゾウ達がこんな目にあっているということを知っていただきたいです。

WWFの象牙問題に関する記事とWILDAIDが作成した素晴らしい動画のURLを以下に貼っておきます。

WWF シリーズ「象牙問題とワシントン条約CoP18」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4050.html

WILDAIDの特設サイト
https://noivory.jp/

ゾウは賢い?

ゾウは賢いとよく言われます。

ゾウは5kg以上ある脳を持ち、その構造もとても複雑です。
彼らは感情を持つとされており、学習能力もすごく高いです。

ゾウは死を理解できるとも考えられています。仲間が死んだときゾウは悲しみ、いなくなったゾウを寂しく思うそうです。

仲間が死んだときゾウは一晩中そばに寄りそい、仲間が死んだところを通り過ぎる際は数分間その場に立ち止まったりもします。

また、ゾウは自分を認識できることでも知られています。人間が鏡を見て顔が汚れていたらその汚れを落とそうとしますよね。

ゾウも鏡を見た時に額の汚れを鼻で落とそうとするそうです。

鏡を見て自分だとだと認識できる動物はゾウの他にもチンパンジーなどのサルで知られています。ちなみにイヌはこれができません。

人間よりもすごい??
ゾウのコミュニケーション

touch

ゾウは互いに触れ合うことでコミュニケーションをとることができます。

あいさつやしつけするとき、順位をつけるときなどによく使われています。

若いゾウは群れで移動しているときに疲れると、母親の足に触ることで休憩したいということを伝え、そして不安に感じている際は鼻の先端を大人のゾウの口にあてることで、安心感を得ます。

耳を振り他の個体に当てる行為は愛情を表しているとされています。

smell

ゾウはコミュニケーションのほとんどを基本的に匂いに頼っています。

ゾウは頻繁に生殖器、口、顔、尿などの匂いをかいでいます。
尿やメスの生殖器のにおいをかぐことでその雌が生殖可能かを判断することができ、虎や人間などの敵が周囲にいる際はにおいを風で運んで他の個体に知らせます。

sound

ゾウはさまざまな種類の音を出すことができ、近距離・長距離のコミュニケーションに使われています。

およそ3分の2の音は人間が聴くことができないとされています。

ゾウは主に低い音を使用し、これらの音は人間が聞けるとされている限界よりも1または2オクターブ低いです。

また、低い音は高い音よりも遠くに届くので遠いところにいる個体との会話に使われます。

ゾウは0.016Hzから12000Hzの音を聴くことができるとされています。

普通の人間の会話では男性は110Hz女性は220Hz周辺とされており、会話中にオクターブは1段階しか変化しません。歌手であっても変化するオクターブはせいぜい2段階です。

一方、ゾウは普段の会話でも27Hzから470Hzまでの音を使い、オクターブは4段階も変化します。時には5Hzから10,000Hzまで音を変化させることもあるというので驚きです!

これらの音によってゾウは2.5km先いる個体とも会話ができ、気候などの条件が整うと10km先まで音を届けることができるそうです!!

visual

ゾウは頭、目、口、耳、鼻、牙、しっぽ、そして体全体を使ってシグナルを送っています。

例えば、威嚇する際や群れの中で優位なゾウは他のゾウに自分のほうが上だと見せるために頭を肩よりも高く上げ耳を広げます。

その一方で、下位のゾウ達は頭を下げ耳をたたむことで逆らわないという意思表示をします。

また、恐れていたり、興奮している象はしっぽと顎をあげ、嬉しい時は耳を振り、目を見開きます。

ゾウと人間の関わり

多くのゾウが動物園などでショーなどのエンターテイメントに使われています。

楽器を弾くことやボール遊び、絵を描くことなどを“ショー”という名のもとに強いられており、観客たちは彼らの苦しみを理解していないことが多いです。

これらのゾウ達はたいてい短い鎖でとても暑く狭いケージにつながれており、水や食べ物を十分に摂取できない環境にいます。

ゾウ達は人間がお金を儲けるために自由を奪われているのです。

 

タイでの人とゾウの付き合いには長い歴史があります。

昔は人々はゾウを輸送や戦争に用いていました。以前は木の伐採の際に木を移動させるのに用いられていました。

この頃はゾウは家族の一員として大切に飼育されていたのですが、1989年に政府が木の伐採を禁止し、多くのゾウが一度に路頭に迷うことになりました。

ゾウを飼育していた伐採に携わっていた人たちも、収入が無くなったうえに、多くのエサを必要とするゾウだけが手元に残り途方に暮れていました。

そのような人たちがバンコクにゾウを連れて行ったり、トレッキングなどの商売を始めました。

このような経緯で多くのゾウが観光客向けに使用されるようになりました。

 

バンコクの町の中でゾウを見ることができる場合があります。

観光客はエサを買い、これらのゾウに手渡しであげたり、一緒に写真を撮ることができたりします。

彼らは日夜問わず歩かされ、そして道路のわきに立たされ通りかかる人がエサを買って彼らに与えるのを待ちます。

ゾウ使いからの虐待もひどく、混雑した道路でも行基良くふるまえるように体を傷つけられてしつけられます。

人間社会の中での生活を強いられているゾウ達は幼いころからしつけを受けています。

これは”phajaan”または”elephant crushing”と呼ばれ、しつけという言葉からは想像できないことが行われています。
これはしつけではなく完全に虐待です…

若いゾウは母親から引き離され、身動きが取れないほどの狭い檻に入れられ、足を鎖や縄で縛られます。

ここに入れられたゾウは金属製のフックやナイフ、先の尖った竹で傷つけられたり、棒などで叩かれたりします。

それに加えて、食べ物や飲み物さらには睡眠までが奪われます。これは数週間続きます。

このようにして肉体的にも精神的にもゾウは追い詰められます。半数以上のゾウがこれによって死んでしまうそうです。

さらに悲しいことにphajaanが終わっても虐待は続きます。

これほど激しいものではないにせよ日常的に叩かれたり金属で刺されたりもします。

僕はアユタヤに行った際に初めてゾウのトレッキングを実際に目にしましたが、その時もゾウ使いは金属のフックを持っていました。

写真や動画のリンクを張ったので時間があればぜひ見て欲しいと思います。

観光客向けのゾウが置かれている状況や背景を知ったり、動画を見たらゾウに乗る気なんてなくなるのではないでしょうか。

皆さんにお願いしたいことは、

ゾウに乗らない、町の中でゾウにあってもエサを買ったりしない、

ということです。

また、この話をこれからタイに旅行に行く方など周りの人にぜひ話してほしいと思います。

出典: https://protectallwildlifeblog.com/phajaan-breaking-an-elephants-spirit/
目を覆いたくなるような動画です
観光客が楽しむ一方でゾウは悲しんでいます…

最後に

ゾウはとても賢く感情があり、高度なコミュニケーション能力も持ちます。

身体はとても大きく粗暴なイメージがありますが、繊細で優しい一面を持っています。

そのようなゾウをお金儲けのための道具として使うのはとても悲しいことだと思います…

象牙問題と観光客向けのゾウの背景は心に留めておいてもらいたいですし、機会があれば周りの人にも教えてあげて欲しいと思います。
多くの人が問題意識を持つことが解決の第一歩だと思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

https://www.elephantvoices.org/elephant-communication/why-how-and-what-elephants-communicate.html
ps://www.saveelephant.org/news/help-put-an-end-to-street-begging-elephants/https://protectallwildlifeblog.com/phajaan-breaking-an-elephants-spirit/
ps://www.saveelephant.org/news/help-put-an-end-to-street-begging-elephants/https://protectallwildlifeblog.com/phajaan-breaking-an-elephants-spirit/
ps://www.saveelephant.org/news/help-put-an-end-to-street-begging-elephants/https://protectallwildlifeblog.com/phajaan-breaking-an-elephants-spirit/
http://nakigoe.jp/nakigoe/2005/04/report01.html

3 COMMENTS

なむすけ

アジアゾウとアフリカゾウの違いを調べていてたどり着きました。

とても勉強になりました。
最後の動画は悲しくて涙が出ました。

いいコンテンツを制作してくださりありがとうございました。

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dolikyou

なむすけ様

記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。
お役に立てたようでうれしい限りです。
動画の調教については多くの人が知らないと思うので、是非周りの人にも伝えてみてください。
コメントありがとうございました。

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