鳥の胃が僕たち哺乳類とは異なる構造をしていることを皆さんはご存知でしょうか?
鳥も陸上に住む動物だし、哺乳類とあんまり変わらないんじゃない?と考える人も多いと思います。
今回はそんな鳥の胃について説明していきたいと思います!
鳥は進化の過程で2つの部位に分かれる胃を獲得しました。
1つ目の領域は腺胃(前胃)と呼ばれます。
この部位の壁は柔らかく、消化酵素を出す腺をもちます。
腺胃の上皮細胞からはpHは0.7~2.3程度の胃酸と消化酵素が分泌され食べ物を分解し始めています。
その次に食べ物は筋胃(後胃)と呼ばれる領域に行きます。
ところで、皆さんはほとんどの鳥が歯を持たないことをご存じでしょうか。
歯を持たない彼らはどのようにして食べ物を砕き、消化しているのでしょうか。
(ちなみに鳥が歯を持たない理由は卵の孵化を早めるためだそうですよ!)
話を元に戻すと、
この歯の役割を果たしているのが筋胃なのです。
筋胃の内部はとても厚い筋肉の壁で囲まれており、表面はやすりのようにざらざらとしています。
筋胃は収縮することで食べ物をすりつぶしています。
ほとんどの鳥ではこの筋胃に砂や小石を含んでおり、それらは食べ物を砕くのを助けています。
焼肉での「砂肝」とは筋胃のことをさします。
しかし全ての鳥がこの筋胃を持つわけではありません。
果物や木の実などの軟らかいエサを食べる鳥では筋胃はあまり発達しておらず、とても小さくなっています。
また、穀物を食べる鳥では筋胃が、肉食の動物では腺胃が発達します。
南アメリカの熱帯雨林に住むHoatzinという鳥は独特な胃を持ちます。
この鳥はなんと反芻をします!
食べるのはほとんど葉っぱで、牛のように胃の中で発酵させます。
Hoatzinは”前胃発酵動物(※)”です。
腸管の前方にあるいくつかの憩室にはセルロース繊維を分解する微生物が住んでいます。
この鳥のそ嚢には微生物が発酵をするための2つの部屋があります。
そこを通過した草などのエサは次に普通の鳥よりも拡張されて太くなった食道を通過しそこでさらに発酵されます。
また、そ嚢と食道はとても筋肉質で、収縮し葉っぱをすりつぶして細かくして反芻の手助けをします。
腺胃と筋胃はこの鳥では比較的小さく、消化における役割もあまり重要ではありません。
身体の大きな草食動物では前胃発酵動物が多いですが、身体の小さな恒温動物でこの方法をとるものはまれです。
なぜなら草はあまり栄養を含んでいないため、とても時間がかかる上に体の中に大きな発酵槽が必要となるからです。
それにもかかわらずHoatzinがこの方法を選んだのは、温暖でエサが豊富にある熱帯雨林に生息しているのと、この鳥は飛ぶのがあまり
上手ではないのであまり動かず、消費するエネルギーがとても少ないためだと考えられています。
(※)前胃発酵動物 (foregut fermenter)
消化管よりも前方の胃などに微生物発酵槽を備えた動物のこと。
反芻動物に加え、カバ、カンガルー、ナマケモノ、コロバスモンキーなどの反芻動物でない動物も含まれる。
他の草食動物は「後腸発酵動物 (hindgut fermenter) 」に分類される。
まさか発酵をする鳥がいるなんて驚きでした!
鳥の胃が2つの部位に分かれるということや、焼肉屋さんで食べている砂肝がどの部位であるか知らなかった方も多かったのではないでしょうか。
皆さんがこの記事を読んで「へぇ~知らなかったな~」と思っていただけたらとても嬉しいです。
他にも興味深い記事を書いていきたいと思います!
最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
参考
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/53071/20160528123157727210/srfa_104_023_034.pdf
https://www.afpbb.com/articles/-/3175626
“Manual of Ornithology” Noble S. Proctor & Patrick J. Lynch Yale University Press